photo Forward Stroke inc.
池袋がいま、「住む街」として大きく注目を集めています。池袋では現在再開発が進行中ですが、そのテーマは「『人』が主役のまちづくり」。歩きやすく整備された歩道。くつろげるカフェ。マルシェで賑わう公園。話題のミュージカルやライブが見られる劇場もできました。毎日を心地よくすごせ、新しい発見もある池袋。住む人が輝くこの街の人気の理由を、歩いて確かめました。
池袋はもともと、暮らしのためのポテンシャルを高く備えた街でした。池袋駅には、JR、東京メトロ、西武鉄道、東武鉄道の4社8路線が乗り入れ、東京の鉄道網を縦横無尽に使いこなせます。また、駅の周辺には「西武池袋本店」「東武百貨店 池袋本店」「池袋パルコ」といった大型店に加え、家電量販店やスーパーマーケットなど、さまざまな商業施設が揃っています。
「東京芸術劇場」や「立教大学」がある西口は落ち着いた雰囲気の漂う文化エリア。「サンシャインシティ」がある東口はエンターテイメントとショッピングのエリアとして人気ですが、その東口エリアが、実は近年の住む街としての池袋人気の発火点です。移転した「豊島区役所」の跡地にコンサートホールとシネマコンプレックスを備えた「Hareza池袋」が開業。向かいにはアートスペースもある商業施設「WACCA池袋」もあり、文化に気軽に触れることができる環境が整いました。「豊島区役所」は東京メトロ有楽町線「東池袋」駅直結の地に隈研吾氏の監修のもと生まれ変わりました。外壁を緑化パネルで覆い、屋上庭園を備えた新庁舎「としまエコミューゼタウン」は、人が主役の街、池袋のシンボルです。
「GRIP」。素材を生かすことにこだわり続ける、自然体のイタリアンレストラン。開放感のあるテラス席が人気
魅力的な店も増えてきました。焼きたてのブレッドや産直の食材とワインが人気のビストロ「ラシーヌ」。テラス席が心地よいイタリア料理の「GRIP」。シェアスペース「ひがいけポンド」で水曜日に開店する野菜ソムリエの店「水曜日のよろずや」。個性的な店に人が集い、新しいコミュニティが生まれています。
「水曜日のよろずや」。新鮮で安価な農産物と店主との会話を楽しみに人々が集まる
コミュニティの場所といえば公園。池袋駅周辺には大きな公園が四つありますが、一つひとつに個性があります。「南池袋公園」は緑の芝生とお洒落なカフェが魅力。「中池袋公園」はアニメなどのサブカルチャーを意識した公園で、声優のショーなどが開催されています。大型ビジョンを備えた「池袋西口公園」はクラシックなどのファインアートをイメージ。「としまみどりの防災公園(愛称:イケ・サンパーク)」は防災公園として大きな役割を担っています。この四つの公園を小さな電気バス「IKEBUS」がつないでいます。かわいい真っ赤なバスがトコトコと走る様子を見るだけで、池袋の街がもつ、住む人への優しさが伝わってきます。
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「サンシャインシティ」のすぐそばに、2020年に新しい公園がデビューしました。「イケ・サンパーク」の愛称で知られるこの公園の面積は豊島区内最大。芝生広場で寝転んだり、カフェのテラスで休憩したり、愛犬と一緒に散歩したり。来園者が思いおもいに楽しんでいる場所ですが、実はこの公園には一つの大きな使命があります。近隣の方々から10万人を越える署名を集めて誕生した「イケ・サンパーク」は、災害時に豊島区の防災拠点となる場所なのです。
「『イケ・サンパーク』という愛称で皆さんに親しんでいただいていますが、この公園の正式名称は『としまみどりの防災公園』というんです。一見しただけでは分からないかもしれませんが、実は防災のための機能や工夫が詰め込まれているんですよ」
そう話してくれたのは、管理事務所副所長の伊藤夏帆さん。消防団員でもある伊藤さんは、公園運営と防災の専門家です。
「まずは火事を食い止める機能です。公園を囲んでいる木は防火樹のシラカシです。芝生の原っぱの中央部分は、災害時にヘリポートに変わります。この公園はヘリコプターやトラックが運び込んだ救援物資を集め、区内各地の避難所に分配する拠点になるんです。災害時には水の確保とトイレが重要ですが、ここには飲み水として使える給水施設に加え、井戸が2個所、地下に40トンの水を蓄えたタンクもあるんですよ。災害用のトイレは下水に直結するタイプが多いんですが、ここの非常用トイレは水洗です。きれいなトイレって、災害時の気持ちのハリにつながりますからね」
他にも、かまどを収納したベンチや、非常用の発電機・公衆電話など、もしものための最新設備を完備しています。周知も大切。防災訓練を毎月開催し、地域の防災力を高める活動を行っています。
普段の「イケ・サンパーク」は笑顔あふれる平和な場所。しかしこの笑顔が、めぐりめぐって防災につながるのです。
毎週土日に開催している「ファーマーズマーケット」では、生産者と消費者が出会い、笑顔の輪が広がっています。公園の一角にある「コト・ポート」はスタートアップを応援する場所で、ショップを始めたい人に場を提供。彼らはここで経験を積みつつ、地域の人たちと顔なじみになります。シェア畑「コミュニティガーデン」では、花や野菜とともに地域のきずなも育っています。
「いろんなことをやっていますが、それには、ここをなじみの場所にしてもらいたいという想いもあるんです。平日はお子さんと一緒に遊び、食事を楽しみ、週末に野菜を買いに来る。みんなと一緒に土いじりもする。いつもの場所、顔なじみの人たちがいる所なら、もしものときに安心して身を寄せることができるでしょう。ここがそうなって欲しいんです」
池袋は人が主役の街。「イケ・サンパーク」は池袋らしさが詰まった公園です。
協力:としまみどりの防災公園(愛称 イケ・サンパーク)
※掲載の情報は、2024年4月時点の情報です