建築デザイン プラウド東陽町サウス

駅近とは思えない静けさと開放感、
潤いのあるたたずまいを併せ持つ邸宅

駅近の喧噪を感じさせない閑静な一角にあり、南側が公共の広場に面するという、恵まれた敷地に建つ「プラウド東陽町サウス」。立地の魅力を生かし、ディテールまで気を配って、街並みにさらなる潤いを加えた建築の見どころを担当者が語ります。

メインビジュアル

周りの環境に馴染むグレートーンの素材を使用

「プラウド東陽町サウス」の計画には、用地取得の段階から関わりました。以前は店舗やカルチャースクールなどが入居した7階建てのビルが建っていたのですが、その建物の中から南側を見ると、裏手に東陽図書館の広場が広がっていて、非常に開放感があるのが印象的でした。また、周辺は集合住宅が多く、駅から近いわりに静かな環境だったのも好印象でした。まずは、この恵まれた立地を最大限に生かしたいと思いました。

建物の色合いは、グレーをベースにしています。敷地の西隣や道路を挟んだ北側に、白を基調にしたマンションが建っていて、それ以外の周辺のオフィスビルも無機質なモノトーンが多かったので、そうした周りの環境との調和を図りたいと考えたからです。

2種類を貼り分けた外壁のタイルについては、サンプルを4〜5回焼き直し、晴天の日に関係者一同が集まって外に並べては、どれがいいかを吟味しました。また、2種類を選んだ後も、どういうパターンで貼り分けるかを決めるため、実物大のサンプルをつくって検討しました。できあがった外壁を見ると、タイルの貼り分けによって、より豊かな表情が生まれており、試行錯誤した意味はあったと思います。

日影規制によるセットバックに意味を持たせるデザイン

この敷地には、建築物が近隣の日照を妨げないように定められた「日影規制」が掛かり、これらをクリアしつつ、97戸の住戸を確保するためには、11階建ての建物を敷地境界線から後退させて配置し、低層部より上層部をさらに後退させるなど、複雑なボリュームの調整が必要でした。

そこで、段差が生じる境目に、マリオン(縦方向の部材)やスリット窓、スラブ(横方向の部材)やバルコニーの手すりを縦横に配してアクセントをつけ、ゆるやかに分節することによって、凹凸のあるデザインに整合性を持たせるように工夫しました。

たとえば、道路に面した北側は4階の切り替え部分にスラブを入れ、上層部はあまり見た目にうるさくならないよう、2層ごとに同じスラブのラインを入れることで、全体に統一感のあるデザインにしています。

緑豊かなアプローチとホテル空間のようなエントランス

道路側から建物までの約8mのスペースを生かし、緑豊かなアプローチをつくりました。建物の前面には雨水枡などの排水設備の設置が不可欠で、植栽はこれらを隠す役割も担っているため、樹木だけでなく丈の低い草木を配置しました。

また、道路とアプローチの間の舗道も、通常のアスファルトより、もっと風合いが出る素材を選びたいと考え、グレートーンのインターロッキングをヘリンボーン張りにしました。

このように、細部まで配慮したアプローチと、風格あるファサードのデザインが相まって、より美しいたたずまいが生まれたのではないかと思います。

エントランスはあえてダークでストイックな色調と素材感で統一しました。設計者との打ち合わせでは、都心のラグジュアリーホテルから着想を得て、イメージをふくらませました。そこから生まれたのが、あの夜空のようなイメージのタイルと、木質系の素材を組み合わせた壁面です。壁をアートで飾るのではなく、壁自体をアーティスティックなデザインにすることで、上質な空間を演出しています。

エントランスの奧に続く開放廊下も、単なる通路ではなく、わが家に帰ってきた安堵を感じさせるような空間にしたいと思い、坪庭の趣の緑を配しました。

限られた広さを有効活用する「ミックスラウンジ」

今回の計画に当たって再考したのが、共用部のラウンジのあり方です。大規模なマンションと違って、100戸前後のマンションの場合、共用部に割ける面積はせいぜい1住戸分で、立派なソファとテーブルを置くと、それだけでいっぱいになってしまいます。

そこで、限られた広さをもっと有効に生かすべく、全体を棚などで軽く仕切っていくつかのコーナーに分けました。これなら、同時に複数のグループが使っても、お互いに気にならずに過ごせます。

目指したのは、サードプレイスとまではいかなくても、自分の家以外で「自分らしく過ごせるもう一つの場所」がマンション内にあるようなイメージです。

たとえば、ここで仕事や打ち合わせができるよう、コピー機やシュレッダー、ドリンクベンダーも用意しました。また、家具の配置を変えれば、全体をセミナーやイベントの会場として使うこともできます。さらに、この「ミックスラウンジ」の外には、ロードバイクのメンテナンスができるコーナーや、ペット用の足洗い場も設けました。

この先、住民の皆さんのアイデアと運用の工夫によって、このスペースがうまく活用されることを願っています。

写真 : 新 良太

インタビュー

野村不動産 住宅事業本部事業推進一部推進一課 沼 大継

これまで数々のプロジェクトを担当してきましたが、土地の取得から引き渡しまで、全プロセスに関わることができたのは、この「プラウド東陽町サウス」が最初です。完成した建物を見て初めて気づいたことがいろいろあり、勉強になりました。図面上の納まりで苦労した部分が美しく仕上がっているのを見ると、細かなディテールの集積が建築の陰影や高級感につながることを改めて感じます。そういう積み重ねの努力を、今後も継続していきたいと思っています。

プラウド東陽町サウス

所在地
東京都江東区東陽
交通
東京メトロ東西線「東陽町」駅 徒歩4分
総戸数
97戸
竣工
2018年5月
※掲載の徒歩分数は、2018年9月時点の「不動産の表示に関する公正競争規約」に沿った表示となります。

※掲載の情報は、2018年9月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。