建築デザインプラウド神田駿河台

国産木材を用いた日本初の
木造ハイブリッド高層マンション

「都心の杜の木の家」を目指し、内装材だけでなく構造材にも国産木材を用いた日本初の木造ハイブリッド高層分譲マンション「プラウド神田駿河台」。2021年度「グッドデザイン・ベスト100」を受賞しました。目に鮮やかな新緑の中、担当者がこの建物に込めた想いを動画で語ります。

高層マンションに国産木材を積極的に使うと、住む人の暮らし、街の景観、ひいては日本を取り巻く森にとっても、さまざまなメリットがあります。その先駆けとして計画された「プラウド神田駿河台」の構造、外観、内装など、細部に及ぶ見どころを担当者がさらに詳しく紹介します。

周辺の緑と調和し、
森林保全にもつながる「木の家」を

敷地は豊かな緑に囲まれ、南に急斜面が広がる高台にあり、御茶ノ水駅から一足とは思えないほど恵まれた環境です。そこから生まれた「都心の杜の木の家」というコンセプトに沿って、構造材や内装材に積極的に木を採り入れた高層マンションを計画することになりました。

14階建ての建物の2〜11階には、木を薄くかつらむきした板を重ねて一体化した「LVL(単板積層材)」と、鉄筋コンクリート造の壁を組み合わせた「LVLハイブリッド耐震壁」を採用。また、12〜14階には、木の繊維の方向を互い違いに直交させて張り合わせた「CLT(直交集成板)」を用いた耐震壁と、「燃エンウッド®」という耐火構造認定を受けた集成材の柱を採用しました。いずれも今回、設計・施工を手がけた竹中工務店が独自に開発したものです。

LVLは山梨県産アカマツ、CLTと燃エンウッドは鹿児島県産のスギを用いています。現在、国内の多くの人工林が伐採適齢期を迎えているにもかかわらず、輸入材に押され、木材自給率は約3割にとどまっています。積極的に国産木材を使うことは、日本の森林サイクルの健全な循環を促し、地球環境を守ることにもつながります。

南傾斜という敷地の特性を最大限活かすため、四隅に柱が出ない構造フレームによって角住戸に大きなコーナーサッシを配し、シャープで印象的なフォルムを実現しています。

建物を見上げると、バルコニー部分の天井や、住戸同士を隔てる板には、一見、木材が用いられているように見えますが、実は天井部分はコンクリート製で、表面に木目調の凹凸をつけたうえで塗装したもの、隔て板は木調のシートを採用しています。将来のメンテナンス性を考慮し、外部には天然木を使用しないことにしたものの、外観からも木の雰囲気を醸し出し、かつ道行く街の人々にもこのマンションのテーマである木の魅力を伝えたいと考えたからです。

外から内へと木の質感を連続させたデザイン

通りに面した1階の壁面も木を感じさせる外装にしたいと考え、木の表情を再現した木調のタイルを用いています。周囲の緑とのつながりを意識し、手前には植栽を施しました。

エントランスの壁も木調タイル張りですが、実はガラスの扉の向こうに続く壁はタイルではなく、本物の木を張っています。連続して見えるよう、ディテールにも気を配りました。

エントランスホールは木をふんだんに活用した空間です。壁面に凹凸をつけて張ってあるのは構造材にも採用したLVLで、通常は表には見えない素材の断面を意匠として見せています。

入口を入ってすぐの一角には、ちょっとした待ち合わせなどの際に腰を掛けられるよう、ヒノキ材を用いたベンチも備えました。

奧に進むとエレベーターホールがあります。和室の地窓から眺める坪庭のように、低い位置に設けた開口部から外の緑が見えます。夜は照明の効果で、また違った趣が楽しめます。

各住戸の玄関脇に設置したプレートに貼ったルームナンバーの数字も、LVLの断面を見せたデザインです。

室内も木の温かみが感じられる空間を実現

このマンションで採用した木構造材であるCLTと燃エンウッドは、一部をそのまま各住戸の内装材として表しにして、温もりのあるインテリアを実現しています。また、床・壁・天井などの仕上げ材にも木を多用しました。

写真はモデルルーム

写真はモデルルームのリビングで、壁と天井に内装材として張ったのは徳島県産のスギの無垢材です。下から見上げるとこれらがコーナーサッシを通じてかいま見え、街にも木の表情を表出させる仕掛けです。また、木には湿度を調節する効果があるだけでなく、データによると、木の香りや模様、色合いには、ストレスを抑制したり、血圧を下げたり、睡眠の質を向上させたりする効用があることがわかってきています。お住まいの皆さんに、リラックスできる木の空間を満喫していただければ幸いです。

写真はモデルルーム

各住戸の間取りは50平米前後の2LDKが中心で、1〜2人住まいを想定したコンパクトなつくりなので、セカンドハウスやアトリエなど、さまざまな用途を想像しながら、空間を有効に活用できるよう、工夫を凝らしました。洋室にウォールドアを採用し、シチュエーションにより通路部分と一体で広々使えるようにしたり、洗面化粧室に配することの多い洗濯機置き場や洋室のクローゼットをあえて通路部分に集約させたりしたのもその一例です。

人々の固定概念に変化をもたらす木の建築を目指して

このプロジェクトを通じて感じたのは、「木」に対する人々のイメージの固定化です。私たちが生活する中で目にする「木」はほとんどが人工的なもので、天然木のように色ムラがあったり、時間の経過によって色が変わったりすることはほぼなく、これが当たり前になっているように感じます。しかし、これら天然木の特徴は弱点ではなく、むしろ魅力なのです。そういった固定概念に変化をもたらすような建築が増えていけば、もっと木の用途は広がるのではないかと思います。

これをきっかけに、今後も国産木材の普及、ひいては循環型社会の実現に向けて、研究を重ね、経験を蓄積していければと思っています。

インタビュー

野村不動産 住宅事業本部 事業推進一部 推進二課 山下りえ

入社してこれまでに10件以上のマンション開発に携わってきましたが、経験を重ねるにつれ、広い視野で計画することの重要性を感じるようになりました。建物のハードだけではなく、コミュニティを醸成させる仕掛けを組み込むといったソフト面も大切なポイントです。たとえば、共用部でマルシェが開けるようなマンションにしたければ、中庭をどうつくるか、セキュリティ対策をどうするかなど、考えるべきことは数多くあります。目に見える形だけでなく、目に見えない部分まで丁寧にデザインすることが、よりよいマンションづくりにつながると考えています。

プラウド神田駿河台

所在地
東京都千代田区神田駿河台
交通
JR中央線・総武線「御茶ノ水」駅徒歩5分他
総戸数
36戸
竣工
2021年2月
※掲載の徒歩分数は、2022年6月時点の「不動産の表示に関する公正競争規約」に沿った表示となります。

ー緑を感じる住まいー

※木造ハイブリッドとは、鉄筋コンクリート造等と木造の部材を適材適所で使い分ける構造設計の考え方を表すものです。
また、「日本初の木造ハイブリッド高層集合住宅」であることは日本CLT協会へのヒアリングとサステナブル建築物等先導事業(木造先導型)の過去採択事業履歴より表現しております。
※掲載の写真はモデルルームCタイプを撮影(2020年4月)したものです
※掲載の情報は、2022年6月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。