建築デザインプラウドタワー平井

人々が集い、街を照らす
灯台のようなシンボルタワー

都心にアクセスしやすい利便性を持ちながら、背後には二つの川に囲まれた豊かな自然が広がる総武線平井駅。その駅前に誕生した「プラウドタワー平井」は、にぎわいの創出と防災性の向上をめざす大規模複合再開発事業によって生まれたタワーマンションです。地域のシンボルタワーとしての外観、人々が集う階段状の広場とテラス、充実した共用施設など、数々の見どころを担当者が解説します。

都市性と自然の豊かさを表現した外観デザイン

江戸川区平井は都心まですぐの総武線沿線にありながら、旧中川と荒川の二つの川に囲まれた自然豊かな街です。平井駅北口広場に面する約0.7haのエリアの複合再開発事業がスタートしたのは2014年。野村不動産は当初から事業協力者としてこの事業に関わり、地権者の皆様や自治体などの関係者と協議を重ねながら計画を進めてきました。

事業の大きなテーマとなったのは、にぎわいの創出と防災性の向上です。もともと駅前はまとまったオープンスペースがなく細い路地に面した古い木造の建物が多いなど、災害時に消防救助活動が困難な課題を抱えた地域でもありました。また、建物の更新による商環境と住環境の調和、街全体の魅力の向上、定住人口の確保も求められていました。

そこで、免震構造のタワーの周囲に、災害時には防災拠点ともなる広場やテラスを配し、平井駅北口の「顔」となる建物づくりをめざしました。建物は29階建てで、1〜3階に商業施設、地域に開かれた集会室や保育園などを設け、5階以上に374戸の住戸を配置。電気室や防災関連施設などは2階以上に配しました。コンセプトの「HIRAI TERRACE」には、文字どおりの「テラス」と、街を「照らす」灯台という、二つの意味を込めています。

外観は、低層部にはガラスを多用し、水平ラインを強調することでシャープで都会的な印象を出しました。一方、タワー部はアースカラーを基調に、自然の温かみを演出し、縦ラインを強調するとともに、上へ行くにつれて色味を薄くすることによって、周囲の街並みや空と調和させています。西面は駅寄りか川寄りかによっても色の濃淡をつけるなど緻密な色彩計画によって、遠くから見ても映えるランドマークとしての表情をデザインしました。

街に開かれた憩いの広場とスキップテラス

低層部には四周を囲むように張り出したテラス、敷地の西側には段状の「スキップテラス」と連続する「いこいの広場」、南側には駅前の活気がにじみ出る「にぎわい広場」を配置。さらに、敷地周辺の歩道状空地の整備、敷地東側道路の拡幅・歩道の新設により安心・安全な歩行者ネットワークをつくるなど、街に開かれた多彩な外部空間を設けました。

高さと広さの異なるテラスを短い階段でつないだスキップテラスは「登ってみたくなる場所」を意識してデザインしました。マルシェやイベント時のステージなど、人が集う多様な場として活用できます。

敷地の外周部には駅前から西側奥の「いこいの広場」に進むにつれて次第に樹高の高い木を植えるなど、高木をリズミカルに配植し、歩いて楽しい空間をつくりました。

「いこいの広場」に配した六つのベンチは、災害時には炊きだし用のかまどとして使える「かまどベンチ」です。北側の歩道には、災害時にトイレとして使える「マンホールトイレ」や「防災井戸」も設置。広場の一角には、これらの防災設備の使い方をわかりやすく解説した看板も立てました。

さらに、オリジナルの防災ガイドブックを開発のうえ各戸に配布し、後述する建物3階共用部のベンチ内にも防災備品を格納するなど、平常時から防災意識を高める工夫を随所に施しています。

また、2階の地域防災倉庫には実際の災害時に役立つさまざまな防災備品を用意。見やすい分類と配置を心がけ、それぞれの使い方を解説したイラスト入りパネルも添付することで、いざというときに冷静かつ適切に対応できるように備えました。

多世代交流を生み出す充実した共用施設

マンションの顔となる2階のメインエントランスのデザインには特に気を配りました。大理石の壁面の中ほどに見える横ライン部分の彫り込み手すりはその一例です。バリアフリー推進が求められる再開発事業であることからエントランスにも手すりの設置が必要でしたが、空間の上質さを保つため、ディテールの検討を重ね、機能とデザインのバランスに配慮しました。

3階には第2のリビングとして活用でき、多世代交流を生み出す多様な共用施設を設けました。テラスに面した間口の広い空間に、憩い・育児・学びの三つの機能を持つコーナーを連続させています。写真は中央のラウンジです。

ラウンジの左手に続くのは、プレイエリアとキッズルーム。ガラスの間仕切り壁越しに、遊ぶ子どもたちを見守りながら親子や友人同士の交流を楽しめます。

ラウンジの右手には、ライブラリーラウンジが続きます。壁面の本棚には地元の古書店に選書を依頼し、平井の歴史や文化、防災にまつわる本など、地域の特性を知ることができる本を集めました。正面のガラスの壁の向こうにはスタディルームがつながっています。

スタディルームはリモートワークや読書など、気分に合わせて自由に居場所を見つけられる空間です。以上のように、キッズルームからスタディルームまで、視線が通るひとつながりの空間の中に、異なる音環境が求められる多様な場をグラデーションのように隣接させることができました。

25階の西の角には住民の皆さんに眺望をシェアしていただけるスカイラウンジを設けました。対面キッチンからも東京スカイツリーが眺められ、晴れた日には富士山も望めます。

スカイラウンジの隣にはゲストルームも用意しました。ホテルライクな空間で、バスルームからも眺望が享受できます。

防災拠点としても地域をつなぐ存在に

事業を推進する中で、「プラウドタワー平井」が街のシンボルになるためには、外観デザインだけでなく、防災性の向上や街の活性化といった地域課題を解決することも必要不可欠であることを強く意識していました。今後、居住者の皆様と地域の連携によって、この建築が「街を照らす灯台」になっていくことを願っています。

インタビュー

野村不動産 開発企画本部建築企画部企画二課 水﨑裕也

再開発事業は事業の完了まで長い時間を要しますが、着工まもない時期から竣工までの約3年間、現場に携われたことは貴重な体験でした。完成後、平井を訪れると「街の雰囲気がよくなった」「若い人が増えた」といった声が聞かれるようになりました。われわれがめざしてきたものが形になったことを実感し、うれしく思います。今後はマンションにお住まいの方々だけでなく、地域の皆様にもご参加いただくマルシェや防災訓練などのイベントを通じて、いざというときに街全体が連携できる体制を構築できるよう、協力を継続していきたいと思っています。

プラウドタワー平井

所在地
東京都江戸川区平井五丁目65番(地番)
交通
JR総武線 「平井」駅 徒歩2分
総戸数
374戸(非分譲住戸106戸含む)
竣工
2024年11月
※掲載の徒歩分数は、2022年7月時点の「不動産の表示に関する公正競争規約」に沿った表示となります。

※掲載の情報は、2025年11月時点の情報です