地域に開かれた街づくりが注目されている亀戸。
伝統工芸を通して街と人をつなぐネットワークづくりに疾走する人たちを紹介します。

1 亀戸の街を歩く

広重の浮世絵に描かれた景勝地・亀戸が、
駅周辺の開発で、緑と利便の街へ

亀戸は「亀戸天神」の門前町として栄えてきた街。江戸時代の絵師・歌川広重は『名所江戸百景』に亀戸天神と亀戸梅屋舗を描きました。当時の面影が残る通りにくず餅の「船橋屋」などの老舗が並び、現在も独特の風情を醸しています。

船橋屋亀戸天神前本店

亀戸は古くから「ものづくりの街」でもありました。江戸城という大顧客に近く、張り巡らされた運河によってアクセスに優れていたこの街には江戸の昔から職人が多く住み、日本の近代化を支えてきました。そんな亀戸が今、都心に近く暮らしやすい住宅地として注目を集めています。

JR総武線と東武亀戸線が通る亀戸駅。両駅を結ぶ「アトレ亀戸」は、1階に「成城石井SELECT」、地下1階に「北野エース」と、こだわりのスーパーマーケットがあるのが魅力。通勤帰りに人気の総菜や食材が手に入ります。商店街も北口から真っ直ぐ延びる「亀戸十三間通り商店街」ほか複数あり、多くの買い物客で賑わっています。

JR亀戸駅周辺

この暮らしやすさがさらにアップすると今から評判になっているのが、2022年に完成予定の新施設です。これは駅南口にあった商業施設「サンストリート」の跡地に誕生し、大型商業施設、住居、にぎわい広場、保育所が生まれる予定です。緑化も十分に考慮され、潤いのある街が出現します。

藤と梅の門前町は
さらに豊かで
潤いのある街へ

佐野みそ亀戸本店

緑といえば、旧中川沿いに広がる「亀戸中央公園」など、緑の中でのびのびと遊ぶことのできる公園もあります。フットサル場やカヌー・カヤック場がある「竪川河川敷公園」はアクティブ派のファミリーに人気。「アトレ亀戸」の屋上に広がる「そらいどひろば」は東京スカイツリーを背景に芝生の上で親子でゆったりと過ごせる場所です。

そらいどひろば

2 新しい風

亀戸の街と人の未来をつなぐ
江戸切子のちから

間近に迫った東京2020オリンピック・パラリンピックのせいでしょうか、今、日本の伝統工芸への関心が内外から高まっています。ガラス器の表面を美しく彫刻したカットグラス「江戸切子」は江戸時代からの歴史を持つ工芸品。その工房は、亀戸など、東京の下町エリアに多く集まっています。

亀戸の観光拠点、「亀戸梅屋敷」の近くにある「彩り硝子工芸」は、卓越した技術と新しいアイデアで、多くのコンテスト で受賞を重ねてきた工房です。代表の熊倉憲二さんは切子職人だったお父さんから学んだ二代目です。

「生まれも育ちも亀戸で、家の周りにはガラス関係の工房がたくさんありました。このあたりには運河が通っているので、材料の珪砂や燃料の石炭を運びやすいんですね。そんな環境で育ったので、当然のようにこの道に進みました」

熊倉さんがガラス工芸の世界に入ったころ、亀戸のガラス工房の仕事は大手企業の下請けが主でした。しかしバブル経済の崩壊で状況は一変。熊倉さんの仕事も減ってしまいます。そこで心機一転。直営店をかまえ、客と直に接することでニーズをつかむ、という戦略に出ます。そこから江戸切子の風鈴などのヒット作が生まれ、客の注文に応えるために、新技術を次々と開発して行きました。また、早くからホームページを開設。今では世界中から注文が舞い込みます。

彩り硝子工芸の熊倉憲二さん

「江戸切子は国や都に認定された伝統工芸。でもね、伝統は『常に積み重ねるもの』。新しい知識や技術が加わってこその伝統なんですよ。古いだけで止まっていたら、それはただの『過去の遺産』です」

熊倉さんの工房はワークショップでも人気です。小学生から大人までを対象に、職人が使う本物の道具を使って製作体験できます。

「息子が小学校に通っていたころ、同級生のお母さんから『夏休みの自由研究で何かできない?』って相談を受けたのが始まりです。私がずっと続けて来た江戸切子、江戸時代から親しまれて来たこの伝統文化を子どもたちに知ってもらうのはよいことじゃないかと思って始めました」

江戸切子づくりの
体験で受け継がれる
亀戸の街の記憶

ワークショップを始めて今年で25年。最初の頃に体験した子どもが成長して学校の先生になり、生徒を連れてきたことも あるそうです。

「当時ご自分で作った作品を見せてくれたんですがね、嬉しかったですよ。それから、近くの小学校の生徒さんが突然訪ねてくることもあります。『街を歩いて知る』授業だっていうんでね」。 こうした活動によって、今では亀戸界隈の子どもたちにとって江戸切子はとても馴染み深いものになっています。

亀戸は江戸の昔から続く「ものづくりの街」。しかし、かつては工房での仕事は外に見せるものではありませんでした。現在は熊倉さんたちの活動によって、ものづくりの技や心は地域の人たちによく知られるようになりました。そして今、亀戸に根ざす伝統工芸は、街の誇りともなっているのです。

常に進み続ける熊倉さん。その姿勢に、亀戸天神の門前町という伝統をベースに、再開発によってさらに住みよい街へと進化を続ける亀戸の街が重なります。

写真:薮崎めぐみ

協力:彩り硝子工芸

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※掲載の情報は、2019年11月時点の情報です