神奈川県相模原市の「相模大野」は、都市と郊外の良さを兼ね備えた街。「新宿」駅へ小田急線快速急行で直通41分(日中時直通35分)でありながら、箱根や江ノ島にも気軽に出かけられる環境。ショッピングやコンサートを楽しめると同時に、豊かな自然も満喫できます。そんな相模大野の街を、相模大野駅北口エリアを中心に歩きます。
「関東の駅百選」にも選ばれている相模大野駅は広々とした造り。北口と南口をつなぐアトリウムでは年間を通じてイベントが開催されています。春は桜、冬にはクリスマスツリーと、季節によって替わる巨大なオブジェは撮影スポットとしても人気です。
アトリウムを抜けて北口へ。駅ビル「相模大野ステーションスクエア」を中央に、「ボーノ相模大野」が左、「相模大野ジョイモアーズ」が右に建っています。これらは屋根付きのペデストリアンデッキでつながっているので雨でも安心。さらにその先には「コリドー通り」「女子大通り商店街」などが続いていて、ショップや飲食店が多数集まっています。
「OLD TOWSON」はオーダーメイド靴の制作と靴修理の店。オーナーは相模原市出身。武蔵野美術大学で美を、靴の本場・浅草で技術を学んだ。
手に持っているのは子ども用のファーストシューズ。記念にもなると人気
自分だけの逸品を作ってくれるハンドメイド靴工房の「OLD TOWSON」、タイから仕入れた食材を使った本格タイ料理を提供する「ソイガパオ」、初心者でも安心して相談できるスポーツ自転車の専門店「ちばサイクルコンセプトストア」といった個性的な店もあります。
相模女子大学、北里大学、女子美術大学を擁する相模大野には学生街の顔もあり、そのため、お店や街に新しさと活気があるのでしょう。食と音楽の祭典「もんじぇ祭り」や、手作り品の青空バザール「相模大野アートクラフト市」は、商店街と地元の有志が中心となって開催。街中が盛り上がります。
「ソイガパオ」はタイ国政府認定の本格タイ料理レストラン。
カジュアルなランチから、ディナー、パーティーまで、本場の味を楽しめる。ペットOKのテラス席もある
「ちばサイクルコンセプトストア」。
創業50年の老舗が開いた、ビギナーに優しい店。すべての自転車を試乗でき、ヘルメットなどのアクセサリーも充実
「コリドー通り」の先には「相模女子大学グリーンホール」。大小2つのホールがあり、コンサート、バレエ、演劇などが開催されています。建物内に図書館もあります。その先に広がっているのが「相模大野中央公園」。「花と水と緑」がテーマの広大な公園で、池や砂場、遊具もあります。週末にはキッチンカーが出店するこの公園は、子どもからシニアまで、多くの世代が集い、交流する場所です。相模大野には「相模緑道緑地」「相模原中央緑地(木もれびの森)」などもあって自然が豊富。自然観察会やワークショップなども頻繁に開催されています。相模大野は、自然の中で憩うとともに、自然から学ぶこともできる街です。
相模大野界隈を自動車で走っていると、車窓に突然深い緑が現れ、延々と続くその緑のベルトに、驚くと同時に清々しい気分になることがあります。かつてこの界隈にはクヌギやコナラの林が広がっていましたが、現在点在する緑のゾーンはその名残、いえ、名残などではなく、より良い未来へと私たちが進むための重要な場所なのです。相模大野駅北口から車で20分ほど。「木もれびの森」の愛称で親しまれている「相模原中央緑地」は、そんな未来につながる森の代表といえる場所です。
「ビルが林立する相模大野駅前から車で少し走っただけなのに、こんなに深い緑があるなんて、驚いたのではありませんか? 木もれびの森は、73ha、東京ドームおよそ16個分の広さがある広大な森です。四季折々に花が咲き、鳥が遊び、虫たちもやって来ます。散策路が整備されていて、近隣の皆さんに親しんでもらっています」
そう話すのは、「NPO法人相模原こもれび」の平野和夫さん。同NPOは相模原市とパートナーシップ協定を結び、森林と里山の保全活動をしています。では森林や里山の保全というのは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
「NPO法人相模原こもれび」のメンバーは約60名。月4回、毎週末が基本的な活動日。
森の整備の他に、調査、教育支援、普及活動、木工品の制作と販売など活動範囲は広い
「森というのは、放っておいてもよい、というものではないんです」と平野さん。「手つかずの自然」という言葉をよく聞きますが、人間が手を入れないと森は死んで行くそうです。ましてやこの界隈の森は自然にできたものではなく、人間が作ったもの。木の幹を薪や炭として、落ち葉を堆肥として使うため、植林して森にしました。しかし今は薪でご飯を炊くことはなく、肥料は化学肥料が中心です。そのため放置されて荒れてしまったのです。鬱蒼と茂って光が差し込まなくなった森は、害虫がはびこり、木が次々と枯れていきます。
NPOの会員たちは、下草刈り、間伐、落ち葉かき、植林などによって森を守り、未来に向けて育てています。現在は薪や堆肥の供給という目的はほぼなくなりましたが、木もれびの森は、憩いの場として、また地球温暖化対策、生物多様性といった観点からもかけがえのない場所です。
楽しそうに工作に取り組む子どもたち。この日は「NPO法人相模原こもれび」の木工チームが考案した動物の置物を作った
NPOの会員たちのもうひとつの重要な仕事は、森の大切さを地域の人たちに知ってもらうこと。相模原市、地域の学校、自治会、企業、他のボランティア団体などと協力し、さまざまな活動を行っています。取材時には「相模原市みどりの少年団」の体験学習の指導を担当しました。
緑の中で健やかに育つ子どもたち。小学生のころから参加し、現在は子どもたちのお兄さんとなって指導する高校生ボランティアもいる
近隣の小学生が集まって、木の伐採の手伝いと、アクセサリー作り、シイタケのホダ木作りに挑戦しました。どの子も生き生きとした表情で、この日の体験はきっとよき思い出となり、また自然や環境について考えるきっかけにもなったでしょう。
「まずは遊びですけどね。楽しかったなぁって思い出して、将来後継者として育ってくれたらと思います」
相模原市は、政令指定都市として初めて気候非常事態宣言を発令した自治体で、専門部署を設けてSDGsにも取り組んでいます。そんな相模原市にあって、「NPO法人相模原こもれび」の活動はこれからも重要なものとして続いて行くでしょう。
協力:NPO法人相模原こもれび
相模原市子ども会育成連絡協議会 相模原市みどりの少年団
写真協力:大野台写真クラブ 谷雄一朗(2 新しい風)
※掲載の情報は、2023年7月時点の情報です