街の中心部を南北に走る「馬場大門のケヤキ並木」。清澄な気に満ちた武蔵国の総社「大国魂神社」。豊かな自然と重厚な歴史を受け継ぐ街「府中」は、誇りを持って住み続けられる街として、かねてから人気でした。近年は、駅前の再開発によって利便性が向上し、子育てファミリーからシニア層まで、世代を問わず注目を浴びています。自然、歴史、都市の利便性が調和した街、「府中」を歩きます。
街の玄関は京王線の「府中」駅。特急で「新宿」駅まで直通32分。コンセントとWi-Fiが完備された座席指定列車「京王ライナー」も利用できます。都営新宿線との相互直通運転で、JRや東京メトロ各線への乗り換えがスムーズにできるのも利点です。
「府中」駅前周辺。買い物とグルメはもちろん、医療施設、映画館、コンサートホール、コミュニティセンターも揃っている
「府中」駅の周辺には大型の商業施設が複数並び、自由自在に使いこなせます。駅直結の「ぷらりと京王府中」、家電量販店を核とした「ミッテン府中」、シネマコンプレックスもある「くるる」など、再開発によって誕生したこれらの施設はペデストリアンデッキでつながり、快適に効率よく買い物を楽しめます。
「蔵カフェ」は旧甲州街道と府中街道が交わる辻にある。歴史を彩ってきた場所に建つカフェの名物は手作りのチーズケーキと酒粕ラテ
「wine restaurant LE CONTE」は、モダンで上質な空間のフレンチレストラン。ファミリー向けに個室も利用できる
ショッピングはもちろん、「府中」はグルメも充実。「蔵カフェ」は江戸時代から続く酒屋「中久本店」の酒蔵をリノベーションした趣深いカフェ。本格フレンチを選び抜かれたワインとともに楽しめる「wine restaurant LE CONTE」。レストラン「府中けやきテラス」ではジャズコンサートなどのイベントも開催しています。「府中」には暮らしに彩りを与えてくれる店が揃っています。
「府中けやきテラスカフェ」は地元の野菜を使った地産地消の店。イベントなどで「街のにぎわい」を作っている
「馬場大門のケヤキ並木」と「大国魂神社」は緑の都「府中」の象徴ですが、この街には自然を感じられる場所が他にも多数あります。子育てファミリーに人気の「府中公園」は桜の名所としても有名。広大な敷地に緑が広がる「府中の森公園」には、野球場、テニスコート、サッカー場などもあり、スポーツも楽しめます。バーベキュー広場は無料で利用できます(要予約)。
「府中の森公園」。秋は紅葉狩りとどんぐり拾い、春は花見、夏はじゃぶじゃぶ池で水遊びと、四季折々に、小さな子どもからシニアまで楽しめる
「府中市美術館」「府中の森芸術劇場」(改修工事のため、2025年4月<予定>まで休館)「府中市民陸上競技場」など、文化・スポーツ施設も充実。「節分祭」「くらやみ祭」「あじさいまつり」「けやき音楽祭 JAZZ in FUCHU」など季節のイベントも盛りだくさん。家族そろって楽しい時間を過ごすことができる機会が多いのもこの街の魅力です。
三沢厚彦《Animal 2018 - 01》2018年
小さな子どもからシニアまで、豊かな自然の中で健康づくりを楽しめる「府中の森公園」。その一画に「府中市美術館」があります。公園とセットでぜひ通いたい施設です。
当館は、市民が身近に美術と出会えるように、2000年10月から活動を続けている美術館です。府中市立の小学校に通うお子さんは、4年生から6年生の間に必ず1回、授業の一環で当館を訪れてくれますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか」
そう話すのは学芸員の大澤真理子さん。学芸員として展覧会の企画を進めると共に、小学生を招く「美術鑑賞教室」にも関わっています。
「各クラスに一人、学芸員がついてアテンドします。美術館に初めて来たという子がほとんどですから、美術館ってどういう所なのかから始めて、作品を観て行くわけですが、こちらが何も言わないと、子どもたちって作品の前をスッと通り過ぎちゃうんです。でもたとえば、『1分止まってしっかり観てみよう』って話しかけると、いろんな発見をしてくれます。私たちが想定していなかったことが返ってくることもあるんですよ」
ワークショップが行われる「創作室」。公園に面した側は天井まで届くガラス張りの広々としたスペース
子どもたちの素直な感性から出て来た反応は得がたいもので、それは「美術鑑賞教室」はもちろん、「企画展」や「アートスタジオ」と呼ばれるワークショップの企画・運営にも大いに役立っているそうです。「アートスタジオ」はほぼ月1回。子ども向けから大人向けまで、さまざまな企画で開催しています。毎回好評で、特に夏休みの子ども向けワークショップ「夏休み自由工房」は大人気だそうです。
府中市美術館では市内各所に展示されているパブリックアートをも管理している。写真は美術館のすぐ横に恒久設置されている若林奮作「地下のデイジー」
美術館が開館当初から行っている「公開制作」も面白い試みです。これは美術館の1室にアーティストが通い、制作プロセスを公開するというものです。作品が生まれていく過程をつぶさに観ることができ、また、アーティストと直接話すこともできます。
「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界」展は府中市制施行70周年記念として開催された。
版画家と油彩画家というふたつの顔を持つミュシャをその両面から紹介
アートと私たちを近づけてくれる試みをたくさん行っている美術館ですが、やはり一番の目玉といえば「企画展」です。2階の大きな展示空間を使って展開するもので、取材時には19世紀末の画家、アルフォンス・ミュシャの展覧会が開催されていました(2024年12月1日に会期終了)。
2024年12月展示中の「小西真奈Wherever」と人気だった「へそまがり日本美術」の告知チラシ
「『企画展』では新しい見方の呈示がいつも意識されています。2019年に開催した『へそまがり日本美術』展には、切り口が刺さったと言いますか、入場制限をかけなければいけないくらいご来館いただきました。幕藩体制を築いた、固いイメージがある徳川家光が、何とも緩い兎の絵を描いていることなどをご紹介しました。」
1階にはカフェ「府中乃森珈琲店」と「美術図書室」もある。カフェでは「企画展」に合わせた特別メニューが用意されることも
美術を通じて多様な価値観を提示し、私たちが新しい視点を得る手助けをしてくれる「府中市美術館」。重ねて来た歴史に再開発で新しい魅力が加わった街「府中」に住む人たちに、これからも快い刺激を与えて続けてくれるでしょう。
協力:府中市美術館・府中乃森珈琲店
※掲載の情報は、2024年12月時点の情報です