都心の真ん中にありながら、緑と静けさに包まれる街「四谷」。「迎賓館赤坂離宮」の杜、「外濠公園」の桜、「荒木町」の石畳。文化と生活が美しく交差する街「四谷」を歩きます。
JR山手線内側のほぼ中央に位置し、JR中央線と総武線、東京メトロ丸ノ内線と南北線の四つの路線が集まる「四谷」は“東京の中心”といえる街です。
躍動する都市・東京のコアでありながら、この街にはどこか落ち着きと風格を漂わせる、独特な風情があります。それは、江戸時代に武家屋敷が立ち並び、明治以降は皇室関連施設や国の外交拠点が置かれるなど、威厳と格式を表現する場としての役割を常に担ってきたからでしょう。この街が醸し、磨いてきた確かな“品”は、「迎賓館赤坂離宮」の荘厳な佇まいや、文教エリアのアカデミックな雰囲気、季節によって表情を変える「外堀通り」の並木道などから、深く濃く感じることができます。
「四谷」の暮らしを語る上で欠かせないのが“食文化の豊かさ”です。老舗洋食店から割烹、気軽な店まで、長く愛されている名店が点在。どれも個性をまといながら、街に深みと余韻を添えています。割烹「鈴なり」は、老舗日本料理店「なだ万」で13年間修業した店主が腕をふるう名店。ミシュランの星を7年連続で獲得しています。
「マヌエル四ツ谷」は日本におけるポルトガル料理店の草分け。異国情緒漂う空間で、ポルトガルワインと本格的なポルトガル料理を楽しむことができます。

「四谷」はまた、知的で文化的な薫りが漂う街でもあります。「上智大学」のキャンパスには学生や研究者が行き交い、周辺は「雙葉学園」「学習院初等科」「区立四谷小学校」などが集まる文教エリアとなっています。図書館や学習施設も身近で、“学び”が日常に溶け込み、暮らしの一部として根付いています。
さらに「四谷」は文化施設が充実していることも魅力です。「新宿歴史博物館」「東京おもちゃ美術館」「消防博物館」など、知的好奇心を刺激し、大人も子どもも楽しみながら学べる施設が揃っています。これらの施設では、この街に溶け込んでいるコミュニティの温かさも感じさせてくれます。
喧噪と静寂、伝統と日常、知性と温かさ。それらが豊かな自然と調和する「四谷」は、都心において上質な暮らしを求める人たちに選ばれ続けてきた街です。季節の光が優しく降り注ぎ、歴史の気配が街の空気に溶け込む。そんな、心を澄ませて暮らすことのできる場所。それが今も変わらず人々を惹きつける「四谷」という街なのです。
「四ツ谷」駅からほど近い外堀の緑を抜けると、突然視界が開け、白亜の宮殿が姿をあらわします。「迎賓館赤坂離宮」です。明治42年に東宮御所として建てられ、昭和49年に外国の賓客を迎える国の迎賓施設として生まれ変わった、日本で唯一のネオ・バロック式宮殿。その存在は、「四谷」の街に“揺るぎない品格”をもたらす象徴になっています。
「迎賓館」の魅力は、その壮麗な外観だけではありません。内部には、西洋と日本の美術工芸を結集した空間が広がっています。もっとも格式の高い部屋とされる「朝日の間」。晩餐会が行われる「花鳥の間」は、天井から吊るされた重さ1トンを超える大シャンデリアと、鹿狩りの様子を織り込んだ紋ビロード織が象徴的です。光が差し込むと金糸がやわらかく反射し、季節の物語が空間に広がります。また「羽衣の間」の天井には、部屋の名前の由来にもなっている謡曲「羽衣」の景趣が描かれ、かつては舞踏室と呼ばれていました。さらに「彩鸞の間」には、瑞鳥・鸞をモチーフにした金属細工がちりばめられ、宮殿建築ならではの華やかさと品格が静かに息づいています。
こうした空間が100年以上の時を経てもなお美しく保たれているのは、専門家たちの緻密な保存と修復の積み重ねによるものです。温湿度管理から素材ごとのメンテナンスまで、細部にわたる技術が日々注がれ、創建当時の状態が丁寧に守られています。

「迎賓館」を生活圏に持つことの魅力は、建築の価値を身近に感じられる点にあります。たとえば、主庭側の噴水越しに眺める外観は、多くの来館者が感嘆する絶景です。朝の光や夕暮れの陰影により、表情が刻々と変わり、訪れるたび新鮮な美しさを見せてくれます。庭園は四季の変化にも富んでおり、新緑や紅葉の季節には自然に満たされた時間が流れます。
近年は、一般公開の充実や夜間ライトアップ、季節イベントなど、文化発信の場としての挑戦も続いています。こうした新しい試みは、「四谷」の街にも“文化の風”を運んでいるように感じられます。
四谷に暮らす人にとって、「迎賓館」は“特別な場所”であると同時に、“身近な日常の一部”でもあります。散歩の途中にふと眺めるだけで気持ちが整い、四季の変化を感じるたびにこの街の豊かさを再認識させてくれる。宮殿建築が生活圏にあるという静かな贅沢は、このエリアに住むからこそ味わえるものです。
写真:内閣迎賓館HP
※掲載の情報は、2026年1月時点の情報です