本駒込は、江戸の美意識を今に伝える六義園をはじめ、小石川植物園や染井稲荷神社など、緑と歴史文化が身近にある街です。江戸時代に武家屋敷が広がり、明治時代に政財界人の邸宅が並んだ伝統と品格を守り続ける街。“住まいの本質”を知る人たちが住む「本駒込」を歩きます。
“住まいの本質”とは何でしょうか。まず挙げたいのは、移動しやすい場所であるということ。「本駒込」は、「本駒込」駅から東京メトロ南北線、「白山」駅から都営三田線、「千駄木」駅から東京メトロ千代田線、「駒込」駅からJR山手線が利用可能。行きたい所へ自由自在に行けるかどうか。それが暮らしの質を左右します。
動くためには休息が大切。それには自然の力が必要です。「本駒込」エリアには、江戸の二大庭園のひとつに数えられる「六義園」、日本最古の植物園「小石川植物園」、「ソメイヨシノ」で知られる「染井稲荷神社」などがあり、日々の暮らしの中で自然を身近に感じることができます。ここでは癒やしのひとときと共に、先人が磨いてきた文化を感じることもできます。
上質な住まいには優雅さも求められます。スーパーマーケット、ドラッグストア、金融機関、飲食店などの便利な施設が揃うと共に、「本駒込」には独特の落ち着きがあります。それはこの街が歩んできた歴史のせいかもしれません。スーパーマーケットと各種ショップや飲食店が入居する「文京グリーンコート」は、湯川秀樹らを輩出した理化学研究所の跡地に建っています。
江戸蕎麦の老舗「小松庵総本家 駒込本店」、フランス家庭料理を気軽に楽しめる「レストラン ラ・セゾン」、堀口珈琲の豆を一杯一杯淹れる「アオアシカフェ」といった暮らしに彩りを与えてくれる店も。少し足を伸ばせば白山エリアと谷根千エリアで、人気の街を日常の延長として楽しめます。

上質な街はそれに相応しい歴史の上に成り立っています。「本駒込」一帯は江戸時代に武家屋敷が広がっていた場所で、「白山神社」「吉祥寺」など由緒ある神社仏閣も多く、それが落ち着いた景観を作っています。
「本駒込」は明治・大正期には政財界の要人の邸宅が並ぶ街となりました。「六義園」と「本駒込」の文化的中核といえる「東洋文庫」がある場所には、かつて三菱財閥の岩崎弥太郎の別邸が建っていました。この街には教育施設も集まり、文教エリアの性格も帯びています。歴史と学びが日常に溶け込み、落ち着きと知性を感じさせる「本駒込」の空気は、こうして育まれてきたのです。
文京区は“文(ふみ)の京(みやこ)”。では「本駒込」の“文”の中心はというと、そのひとつは「東洋文庫」です。「六義園」の近くに建つ白壁の建物は、本がずらりと並ぶ書架を表現したもの。中に入ると、若いカップルからシニアまで、みな楽しそうです。実は「東洋文庫」の1階から2階までは、一般の方を対象とした「東洋文庫ミュージアム」となっているのです。
「『東洋文庫ミュージアム』へようこそ」と和やかに迎えてくれたのは、総務課参事の小林敬子さん。「研究者のための施設だと思っていました」と伝えると、「そのイメージが強いですよね」とちょっと残念そうに返ってきました。
そう考えるのも無理はないでしょう。「東洋文庫」は日本最古・最大の東洋学の研究図書館なのですから。蔵書は約100万冊。その中に国宝5点と重要文化財7点。「東洋文庫」は世界の東洋学五大研究図書館の一つに数えられているほどです。
「その膨大なコレクションを一般の方に見ていただきたい、多くの方にアジアの歴史と文化に興味を持っていただきたいと2011年に開設したのが『東洋文庫ミュージアム』です。『広く一般に、開けたものに』というのがコンセプトで、誰にでも楽しめるよう、細かいところまで工夫しています。さらに親しんでいただけるよう、2024年末から約1年間かけて改装いたしました」
展示されているのは、芸術作品のように手をかけて創られた本、何度もめくって読んだ跡が残った本……。文字情報だけではない何か、当時の息吹のようなものが伝わってきて、それは実物を目にすることでしか得られないでしょう。すべて「東洋文庫」の収蔵品であることにも、その奥行きの深さに心を動かされます。
その圧倒的なスケール感を最も感じられるのが「モリソン書庫」です。天井まで続く書棚にずらりと24000冊。大迫力です。この「モリソン書庫」に並べられている本は、オーストラリアのジャーナリスト G.E.モリソンが19世紀末から20世紀初頭にかけて収集したもので、三菱第三代社長岩崎久彌が買い取り、それを核に1924年に開設したのが「東洋文庫」です。
岩崎久彌が「東洋文庫」に相応しい場所として選んだのは、ここ「本駒込」でした。「六義園」を始めとする歴史的な庭園や文化資産が点在するこの一帯は、古くから“文化を育てる環境”としての素地を備えていました。自然を愛で、知を深めることの両方が日常の中にある街として、「本駒込」はその思想を今に伝えています。
小林さんに「東洋文庫ミュージアム」を一言で表現するとと訊ねると、「知れば知るほど好きになる、興味がわいてくるミュージアム」と答えてくれました。年3回替わる企画展、平常展も見どころがいっぱい。四季折々に楽しめる庭園も魅力です。
ミュージアム併設の「オリエント・カフェ」は小岩井農場が運営するレストランですが、ミュージアムの利用に関係なく入店できます。ランチ、ティータイム、ディナーと利用でき、また、時季に応じて小岩井農場直送の野菜販売なども行われます。「東洋文庫ミュージアム」は、「本駒込」に暮らす人たちにとって、知的好奇心を刺激する場所であるとともに、オアシスでもあるのです。
取材協力:東洋文庫ミュージアム
※掲載の情報は、2026年5月時点の情報です