「大手町」駅に直通約6分。都心直結の好アクセスを備えながら、温かな人情と水辺の潤いも併せ持つ街があります。それが「門前仲町」。江戸から続く歴史と下町文化を受け継ぎ、新しい感性も息づくこの街を歩きます。
旧深川区エリアに位置する「門前仲町」は、徳川家康による江戸の街づくりの初期から開発が進められた地域の一つ。長い歳月の中で、人々の暮らしと文化が息づく街へと発展してきました。
「門前仲町」には「富岡八幡宮」が創建し、のちに「成田山 東京別院 深川不動堂」となる成田不動の出開帳も行われるようになりました。門前町となったこの街は、賑わいとともに大きく発展しました。「富岡八幡宮」は江戸最大の八幡さまで、「江戸三大祭」の一つである通称「水掛け祭」は、今も昔も街をあげての盛大なお祭りです。「深川不動堂」の参道「人情深川ご利益通り」には老舗の和菓子店や佃煮の店などが並び、縁日にはいっそう賑わいます。
「門前仲町」は食の魅力も発展させてきました。その代表といえるのが「深川めし」。江戸庶民の味を伝えるこの郷土料理は、今も変わらず愛され続けています。名店「深川宿 富岡八幡店」など街のさまざまな店で味わえます。昭和レトロ好きなら「辰巳新道」。小さな居酒屋とスナックがひしめき合う、昔ながらの賑わいと人情の小道です。
その一方、近年はロースタリー・カフェや雑貨店など、新しい文化を発信するショップも増えてきました。「ななツール」は江戸の遊び心と現代の感覚がミックスした品揃えが人気の雑貨店です。
「VINOMONDO」は、隅田川を眺めながらワインと自家焙煎コーヒーが楽しめるレストラン。新旧が自然と混じり合う「門前仲町」は、今、さまざまな世代が楽しめる街となっています。

「門前仲町」は東京メトロ東西線と都営大江戸線が利用でき、JR 京葉線「越中島」駅と東京メトロ有楽町線「月島」駅も徒歩圏内です。このようにアクセスに優れた街でありながら下町らしい“粋で人情味のあるコミュニティ”が今も息づいているのはなぜでしょうか。
それは「門前仲町」が古くから栄えてきた水辺の街だということと無縁ではないでしょう。隅田川、大横川。広がる大空。川沿いに伸びる桜並木。「お江戸深川さくらまつり」では和船に乗って花見を楽しめます。周辺には「木場公園」や「清澄庭園」といった大きな公園もあります。自然と身近に触れ合えること。それが心にゆとりを生むのでしょう。
「深川東京モダン館」「深川江戸資料館」といった文化施設が身近に揃い、「東京都現代美術館」へはバスでアクセスできます。暮らしの延長で歴史や文化に触れられる。それもまた、「門前仲町」での日常を豊かに彩る魅力の一つです。
「門前仲町」のシンボルの一つ「成田山 東京別院 深川不動堂」は、古くから人々の願いを受けとめてきたお不動さまです。その参道「人情深川ご利益通り」に、今年4月、新しいスタイルのカフェがオープンしました。フラワーカフェ「花ナ々ナ(hana bana)」です。店内に所狭しと飾られた花を愛でながらこだわりのフレンチトーストを味わうという体験は新鮮で、人気を集めています。
白い外壁に木枠を活かした窓。目を惹くアーチ状の入口から店内へ。店長の安部有香さんがにこやかに迎えてくれました。まずはどのような店なのか、伺いました。
「『花ナ々ナ』は緑と触れ合いながら、おいしいコーヒーとフレンチトーストを中心としたお食事を楽しめる店です。長い経験をもつ職人が焼きあげたパンを使ってフレンチトーストを作っています。甘いデザート系と甘じょっぱいお食事系をご提供しているんですが、使うパンもパンを浸す液の配合も変えています。そして、液に一晩浸けて、外はカリっと、中はふわっと焼いています。この食感が当店の職人のこだわりなんです」
ドライフラワーや多肉植物が並べられた店内はスタイリッシュ。どのようなお客様が多いのか尋ねてみると、こんな言葉が返ってきました。
「ご利用の層は幅広く、日常の合間や仕事の前後など、さまざまなシーンで立ち寄られる方が見受けられます。当店は朝8時から営業していますが、ジョギングの最後に寄ってくださるお客様は、朝活にいいんです、とおっしゃってくださいます」
奥に進むと大きな窓。その向こうに「深川公園」が広がっています。輝く太陽。爽やかな木陰。そよぐ風。園内では子どもたちが遊び、お母さんたちが談笑し、ご年配の方たちが穏やかな時間を過ごしています。「花ナ々ナ」があるのは公園とリンクする場所。さまざまな世代の人たちに認知され、愛されている理由のひとつはこれでしょう。
「参道沿いというのも大きいかと思います。神聖な風が流れるといいますか、鳥居に礼して行かれる方も多いですし、優しい気が満ちている場所だと感じます。参道で古くから商いをされている皆さんもみな親切で、すごく親しみ深く話しかけてくださいます。懐かしさが感じられる商店街ですが、当店以外にも新しいコンセプトの店がちらほらあります。新しいものを柔軟に受け入れてくれる、温かさがある街だと思います」
安部さんに「門前仲町」を花に喩えると何でしょうかと尋ねてみました。
「『アナスタシア』でしょうか。キク科なんですが、和でも洋でもすごく組み合わせやすくて、透明感のある緑は、華やかなお祝い花にも使えます。和も洋も受け入れて、歴史があって、美しい。それが『門前仲町』らしいと思います」。
伝統を大切にしながら新しい魅力を育んできた「門前仲町」。「花ナ々ナ」もまた、この街にしっかりと根を下ろし、新たな風景の一つとなってゆくことでしょう。
取材協力:花ナ々ナ 門前仲町
※掲載の情報は、2026年6月時点の情報です