プラウドが生まれる街浦和

「浦和」は県の主要機能が集まる県都です。文化施設や名門校が揃う文教エリアとしての顔もあり、子育て世代からの支持を集める街です。複数の鉄道路線が利用でき、都心へのアクセスもスムーズ。駅周辺には商業エリアが発達し、大型商業施設から個性的なカフェまで、多様なニーズに応えています。そんな「浦和」の街を歩きます。

1 浦和を歩く

文化と自然が身近にある
浦和という選択

中山道の宿場町であった「浦和」は古くから交通の要衝でした。その伝統を受け継ぐこの街は現在もアクセス良好。「浦和」駅には、JR京浜東北線、高崎・宇都宮線(上野東京ライン)、湘南新宿ラインの3路線が通り、「東京」駅方面にも「新宿」駅方面にも乗り換えなしで向かうことができます。

「浦和」は商業施設が多彩に揃う買い物便利な街でもあります。駅周辺には「伊勢丹」「パルコ」「アトレ」などの大型商業施設。個人店では老舗と新しい感覚の店が並び、バラエティ豊かです。

「中村家」は、三代にわたり暖簾を守り、「浦和のうなぎを育てる会」の中心として食文化の継承にも尽力している
「中村家」は、三代にわたり暖簾を守り、「浦和のうなぎを育てる会」の中心として食文化の継承にも尽力している

うなぎの老舗「中村家」は1937年創業。備長炭で香ばしく焼き上げる蒲焼は今も昔も「浦和」の味です。「Coffee&ギャラリー 杏樹」は住宅街の一画にたたずむカフェで、自宅のリビングでくつろぐような穏やかな時間を楽しめます。サロンコンサートやマルシェの会場としても利用されています。「さきっちょ」は靴下と生活雑貨の店。健康の基本である「歩くこと」にフォーカスした品揃えで人気です。

「Coffee&ギャラリー 杏樹」は、自家焙煎店の豆を使ったこだわりのコーヒーと、絵画や工芸作品の展示が楽しめる、地域に親しまれるギャラリーカフェ
「Coffee&ギャラリー 杏樹」は、自家焙煎店の豆を使ったこだわりのコーヒーと、絵画や工芸作品の展示が楽しめる、地域に親しまれるギャラリーカフェ
「さきっちょ」は、「歩く暮らしを豊かに」をテーマに、上質な靴下や生活雑貨を提案。ギャラリーや展示会も楽しめる

歴史と文化、豊かな緑が
日常を彩る街

名門校がひしめく「浦和」は文教エリアとしても知られています。伝統校が集結するこの街には図書館などの文教施設や静かな公園もあり、学びの環境が整っています。
「浦和画家」という言葉があるように、「浦和」には昭和初期を中心に多くの著名芸術家が暮らしていました。文化の伝統を受け継ぐこの街には「埼玉県立近代美術館」「うらわ美術館」といった施設があり、アートに気軽に触れることもできます。

前川國男設計で知られる「埼玉会館」は1966年に開館。音楽や演劇、美術など多彩な文化活動の拠点として親しまれている。映画『砂の器』のロケ地
前川國男設計で知られる「埼玉会館」は1966年に開館。
音楽や演劇、美術など多彩な文化活動の拠点として親しまれている。映画『砂の器』のロケ地

文化人が「浦和」に居を構え、この街に芸術の種を播いたその理由の一つには、この街の豊かな自然が挙げられます。清らかな水にメタセコイヤの高木が美しく影を落とす「別所沼公園」は、散策にランニングにと、市民に広く愛されています。「北浦和公園」はアートと親しむことができる公園で、園内に野外彫刻が多数設置されています。他にも、狛犬ではなくウサギが迎える神社として人気の「調神社」や、桜の名所として知られる「玉蔵院」などがあります。

「調神社」は、月待信仰で知られる浦和の古社。縁結びや安産、開運のご利益を求め、多くの参拝者が訪れる
「調神社」は、月待信仰で知られる浦和の古社。縁結びや安産、開運のご利益を求め、多くの参拝者が訪れる

2 新しい風

アートが暮らしに息づく。
椅子から始まる美術館

都市機能と豊かな自然が調和する街「浦和」。自然を身近に感じられる場所がいくつもありますが、「北浦和公園」はその一つ。多くの市民が集うこの公園には、文教エリア「浦和」ならではの施設があります。「埼玉県立近代美術館」です。

「北浦和」駅から徒歩約3分。北浦和公園の緑に包まれ、木立の先に印象的な建築が姿を現す
「北浦和」駅から徒歩約3分。北浦和公園の緑に包まれ、木立の先に印象的な建築が姿を現す

巨大な鳥かごを思わせる外観。緩やかに波打つ大きなガラス壁。存在感を放ちながら公園の緑と見事に調和するこの建物は、黒川紀章の設計です。

巨大なグリッドを抜けると波打つガラスが現れ、美術館の入口に。ファサードが公園と美術館を緩やかにつなげている
巨大なグリッドを抜けると波打つガラスが現れ、美術館の入口に。ファサードが公園と美術館を緩やかにつなげている
建物のもう一つの見どころである、吹き抜け空間。
建物のもう一つの見どころである、吹き抜け空間。

「当館の建築にご注目くださり、ありがとうございます。黒川紀章氏は美術館の建築をいくつか手掛けられましたが、当館は氏の美術館建築の最初の作品なんですよ」

美術館入口横の窓から公園を眺める。公園内には屋外彫刻が多数展示されている。左に見える赤レンガのような作品は橋本省の《流水の門》
美術館入口横の窓から公園を眺める。公園内には屋外彫刻が多数展示されている。
左に見える赤レンガのような作品は橋本省の《流水の門》
主任学芸員の吉岡知子さん
主任学芸員の吉岡知子さん

そう教えてくれたのは主任学芸員の𠮷岡知子さん。「地下1階から地上3階までを貫く吹き抜けも見どころのひとつです。天井から自然光が降りてきて、荘厳な空間になっています」

美術館は埼玉ゆかりの作家の作品と、印象派からエコール・ド・パリに至る時期のフランス絵画を中心に約4200点の作品を収蔵しています。年3回開催される企画展は、そのユニークな視点で注目を集めています。

倉俣史朗の代表作の一つ《ミスブランチ》。この作品は美術館の友の会「埼玉県立近代美術館フレンド fam.s(ファムス)」から寄贈された。
倉俣史朗の代表作の一つ《ミスブランチ》。
この作品は美術館の友の会「埼玉県立近代美術館フレンド fam.s(ファムス)」から寄贈された。

美術館のユニークな点はそれだけではありません。名作椅子を約70種類コレクションしているのです。椅子のコレクションは初代館長を勤めた本間正義氏の主導で行われたそうです。
「初代本間館長は当館の館長に就任する前は大阪の国立国際美術館の館長を勤めていました。海外の美術館の視察などもされていたので、視野も広かったのでしょうね。本間館長が、『美術作品は眼で観ることはできるけれど保存の観点から触るのは難しい。でも椅子なら、座って触って体感できる。館内に置いて休憩のときに楽しんでもらおう』とおっしゃったことがきっかけで収集が始まったそうです」

館内各所に展示されている名作椅子。現在どの椅子が展示されているかは、美術館のウェブサイト内の「今日座れる椅子」で確認できる

座ることで
アートを体感できる美術館

美術館は名作椅子を学校に運び込んで鑑賞するプログラムなど、教育機関との連携も盛んに行っている。美術館に在籍している県内学校の教員籍が担当しているので、実情に即した活動ができる
美術館は名作椅子を学校に運び込んで鑑賞するプログラムなど、教育機関との連携も盛んに行っている。
美術館に在籍している県内学校の教員籍が担当しているので、実情に即した活動ができる

名作椅子はいくつかを除いて実際に座ることができます。来館者は座り心地を味わったり写真を撮ったりと、思いおもいに楽しんでいます。この春にコレクションに加わった《ボールチェア》の座れる体験イベントには、2日間で200人ほどが訪れ、その独特な座り心地を堪能しました。

この春の新収蔵の椅子、エーロ・アールニオの《ボールチェア》。収集に際してクラウドファンディングを活用したが、埼玉県内の方々からのご支援も多かったとのこと
この春の新収蔵の椅子、エーロ・アールニオの《ボールチェア》。
収集に際してクラウドファンディングを活用したが、埼玉県内の方々からのご支援も多かったとのこと
大きなくちびるのような《ボッカ》は一番人気。見て、座って、感じて、考えて。優れた椅子はアートの世界への入口となる

「椅子って、人間の身体に一番近いというか、人の身体に寄り添うようにできていると思います。見た目が華やかだとすごく愉快になりますし、座り心地がよいとくつろいだ気分になります。球状のカプセルの中に入り込むように座る《ボールチェア》では、周囲の環境から切り離された世界にいるような感覚を覚えるでしょう。椅子は人の心のありように大きな影響を与えるんです」

美術館の周りには気持ち良い緑が広がっている。「北浦和公園」での散策の途中に気軽に立ち寄れる環境だ
美術館の周りには気持ち良い緑が広がっている。「北浦和公園」での散策の途中に気軽に立ち寄れる環境だ

椅子は五感で感じるアートといえるかもしれません。それゆえ優れた椅子には私たちの暮らしを豊かに変えてゆく力があります。多くの名作椅子に触れることができる「埼玉県立近代美術館」は、アートと暮らしをつなぐ場所、豊かな暮らしへのヒントに出会える場所でもあるのです。

取材協力:埼玉県立近代美術館
     埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
     開館時間
     10:00~17:30 (展示室への入場は17:00まで)
     休館日
     月曜日(祝日または県民の日の場合は開館)
     年末年始、メンテナンス日

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※掲載の情報は、2026年7月時点の情報です