インタビュー

「私の街、桜新町」vol.1

地域で愛されるドイツパンの名店「ベッカライ・ブロートハイム」店主 明石克彦さん

「焼きたてパンで地域の食卓をちょっと豊かにする、それが街のパン屋の仕事」

パンは「作る」より「育てる」種から手作りするパン作りの原点

ここがオープンした約30年前は、まだ日本にちゃんとしたドイツパンを提供するお店はほとんどありませんでした。そんななか、独学でスタートし、いまでは都内や日本各地から足を運んでいただけるお店となりました。フランス、ドイツなどパンの本場から視察がくることもあるのですが、「いまだにこんな作り方をしているのか」と驚かれます。種から手作りするので、方法としてはとてもレトロなんです。大量生産の時代、ドイツでもそんな作り方をするパン屋さんはほとんどないという。でも、自分がはじめたときはこの方法しかなかったし、今でも一番いいと思ってやっています。仕込みは大変ですが、それが面白さでもある。パンは「作る」より「育てる」という感覚ですね。発酵の段階で温度や湿度を何度も確認し、かまどを開けるあの瞬間。人の手ではコントロールしきれない「神の領域」というものがあると感じます。十字に切れ目が刻まれているパンがありますが、あれにはそういった願いも込められているんです。

生まれ育った大好きな街に美味しいパンを届けたいという思い

ドイツパンやフランスパンってこういうパンだっていうことを、地域の方々に伝えたくてはじめたお店ですが、この30年のあいだにパンのちゃんとした美味しさを知る方が増えたと感じます。ライ麦の味わいがしっかり感じられるドイツパン、バゲットやカンパーニュタイプのフランスパン。毎日お食事として食べても飽きないシンプルなパンの魅力を理解し、楽しまれている方が多いですね。遠方からも足を運んでいただいておりますが、焼き立てや、食べごろのパンを半径500mのお客様に提供したいというのはオープン当初から変わらない思いですし、街のパン屋というのはそうあるべきだと思っています。一番大事なのは味と香り。そのパンがあることによってご家庭の食卓がちょっと豊かになること。贅沢ではなく、ほっと温かくなる、そんなことがパンを通じてできればいいですね。自分自身、この街で生まれ育ち、65年以上たちます。馬事公苑に砧公園緑地、駒沢公園。緑豊かな環境なのに都心にも近い。静かで穏やかで、大好きな街です。この街でお客さんが美味しいと言ってくれれば、これ以上にうれしいことはない。パン屋になってよかったなと思います。

DATA
ベッカライ・ブロートハイム
& カフェ・ゼーバッハ

1987年に開業。「ロッゲン・シュロート・ブロート」や、「パン・ド・カンパーニュ」「パン・ド・ロデブ」などシンプルな風味を楽しめる食事パンを通じ、ドイツパン、フランスパンの魅力を発信し続けている。注文を受けてからクリームを絞る「クリームホーン」、クリームパンやあんぱんなど親しみやすいパンも。併設のカフェ・ゼーバッハでは、焼きたて、買いたてのパンをスープやコーヒーとともにいただける。

  • 所在地 / 世田谷区弦巻4-1-17
  • 電話番号 / 03-3439-9983
  • 営業時間 / 7:30~19:30
  • 定休日 / 月曜日・第一火曜日
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※ベッカライ・ブロートハイム & カフェ・ゼーバッハ:現地より約700m/徒歩9分
※営業時間、定休日は変更になることがあります。詳細は各店舗のHPよりご確認ください。
※掲載の写真は平成29年11月に撮影したものです。