季節を愉しむ、瓶詰の喜び

料理家の中川たまさんの瓶詰は、季節の味がぎゅっと詰まった宝石箱。
つくる時間を愛おしみ、おいしさを家族や友人とも分かち合う暮らしには、季節の上手な愉しみ方が詰まっています。

1 旬を愉しむ

旬を身近に感じることで
日々の暮らしの中に
小さな幸せが生まれる

日増しに陽射しが温かくなってくると、体は温かい季節へ向けて変化していきます。例えばほろ苦い山菜や菜の花を食べたくなるのは、冬に溜まった毒素の排出を促してくれるから。旬のものには、その季節に必要な栄養素がたっぷり含まれていて、そのときどきの気候に合う体へと導いてくれるのです。

そんな自然の恵みを中川家では料理だけでなく、部屋に飾って楽しみます。花の咲く野菜は少し残して花が咲く風景を慈しみ、果物は窓辺やダイングに置いて熟していく色や香りを愛でる。舌だけでなく目、鼻、手などで旬を感じることで、日常の暮らしの中にある小さな喜びに気づけます。

2 旬を閉じ込める

瓶詰は季節の小さな宝物。
今、このときだけのおいしさを、
ぎゅっと詰め込む

旬の食材を瓶詰にするのは中川さんの季節の手仕事のひとつ。食材によって旬の時期はとても短いから、少しでも長く季節の美味を味わうために、一部を瓶詰にしています。
ひと手間加えると生とは異なる濃縮したおいしさが生まれ、今まで気づかなかった食材の新たな味わいに気づけることも。手づくりジャムやオイル漬け、シロップ漬け、ビネガー漬け、ペーストなど、食材に合わせてさまざまな方法で瓶に詰め、季節を惜しみながら楽しみます。

いちごジャムづくりは
無心になれる幸せな時間。
春を感じられる大好きなひととき

中川さんが毎年心待ちにしているいちごジャムづくりは、シンプルなだけに奥深く、いまだ研究を続けています。手づくりのジャムは、自分でつくるからこそ好みの味にできるのもうれしいところ。煮込みすぎず、あえていちごの粒感を残すのが中川さん流。途中、浮いてくるピンクの泡をていねいにすくいながら炊いていると、日々の心配事も忘れてしまいます。甘酸っぱい香りに包まれながら無心に作業するひとときは、ストレスをほぐし自然体の自分にリセットしてくれる癒しの時間。忙しい毎日の中で、心が安らぐ大切な時間なのです。

いちごから出るピンクの泡はアクの一種ですが、苦みがなく、いちごの旨みが濃縮したシロップのよう。手づくりだからこそ出会えるおいしい副産物は、ヨーグルトに混ぜるなど、ジャムづくりの合間のおやつにどうぞ。

瓶詰は生きもの。
色とりどりの美しさや
育てる過程を慈しむ

さまざまな旬の食材をいろいろな瓶詰にし、窓辺やカウンターに並べてでき上がっていく間の変化も楽しみます。シロップに漬け込んだものはシュワシュワと泡が出てきたり、ビネガーに漬けたピクルスは色合いが変わっていったり……。
手づくりの瓶詰を身近に置いて眺めると、「育む」という温かい気持ちがわき上がり、愛おしくなるのです。

味が濃縮された瓶詰なら
急なおもてなしにも活躍。
手軽においしさを引き出せる

デザートだけでなく、料理にも瓶詰をよく使う中川家。コンポート風の手づくりいちごジャムは、料理のソースとして調味料とよくなじみ、適度な酸味が肉や魚の味を引き立てます。瓶の中で徐々に発酵した柑橘のシロップ漬けは、炭酸水で割っておもてなしの一杯に。時間の魔法でおいしく育まれた瓶詰は、急な来客時にも頼りになる存在。ひと匙でも料理や飲み物を味わい深くし、季節感を添えてゲストを楽しませてくれるのです。

3 旬を贈る

瓶詰めは旬の味覚を
おすそ分けできる
ささやかな季節の贈り物

たくさんつくった瓶詰は、ちょっとした贈り物にも喜ばれます。おおげさに見えないように、ほどよく使いこまれ感のあるアンティークのペーパーや紐で包み、さりげなく手渡す中川さん。
そのときどきの旬のエッセンスを詰めた瓶詰を、そのとき会う人に贈る。タイミングによって中身が異なり、贈る楽しさ、もらう喜びも自然に生まれる、ささやかな季節の贈り物。小さな瓶詰を通して、季節を愉しむ喜びを共有できるのです。

- 春の手づくり瓶詰レシピ -

ローズマリーとバルサミコ酢のいちごジャム

材料 (400㎖の瓶1本分)

  • いちご…2パック(約500g)
  • 洗双糖…150g(いちごの重量の約30%)
  • ホワイトバルサミコ酢(または白ワインビネガー)…大さじ2
  • 白ワイン…50㎖
  • ローズマリー…1枝

つくり方

  1. 1

    いちごはヘタを取る。ボウルに全ての材料を入れて混ぜ合わせ、砂糖が溶けるまで3時間ほどおく。

  2. 2

    1を鍋に入れて強火にかける。ふきこぼれそうになったら少し火を弱め、アク(ピンクの泡)を取りながら、少しとろみがつくまで10分ほど煮て火を止める。

保存について

アルコール消毒、または煮沸した保存瓶に入れて、冷蔵で約2週間、脱気※して常温で約2ヵ月。

※しっかり蓋を閉めた瓶を水から火にかけて30分以上熱して空気を抜いた状態。

ナビゲーター中川たまさん

<プロフィール>
料理家。ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て2008年独立。旬を大切にした季節の野菜やフルーツを活かしたレシピと、洗練されたスタイリングを雑誌や書籍で提案。神奈川県・逗子で夫と娘と暮らしながら、季節感を大事にした手仕事に勤しむ。著書に『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』『季節を慈しむ保存食と暮らし方 暦の手仕事』(ともに日本文芸社)ほか多数。

※掲載の情報は、2018年1月時点の情報です

ページトップへ