建築デザイン

プラウド南麻布

メインビジュアル

計画の見直しによって生まれた円弧状のプラン。
由緒ある都心の森を最大限に生かした住まい

敷地は、都心にありながら江戸の昔から続く広大な森に隣接する、旧フランス大使館跡地。緑豊かな環境を最大限に生かした住まいとして高い評価を受けた「プラウド南麻布」ですが、実は幾多の困難を乗り越えて完成に至った労作です。その経緯とプロジェクトへの思いを担当者に聞きました。
(話 : 都市開発事業本部芝浦プロジェクト推進部 笹本 和孝)

大幅な変更を余儀なくされた当初の計画案

このマンションは日仏交流150周年の記念事業で、フランス大使館建替えの一環として開発されました。まず大使館が所有する敷地の一角に新大使館を建て、移転が完了したところで旧大使館を解体し、跡地に定期借地権付き分譲マンションを建てるという計画でした。敷地内には江戸時代から守り継がれてきた約1ヘクタールもの広大な森があり、この恵まれた稀有な環境をいかに生かすかをプロジェクトの大きなテーマとしました。

最終的には7階建て、全88戸という規模になりましたが、実は当初は6階建てで全59戸、1住戸の広さは平均150㎡で、森側と道路側の両面にバルコニーがある間取りが中心という贅沢な計画でした。

ところが、新大使館の着工後まもなくリーマンショックが起こり、マンション設計は大幅な変更を余儀なくされることになったのです。当時は、毎日ずっとプランの見直しに取り組んでいました。

試行錯誤の末に辿り着いた、森を囲むフォルム

森を包み込むような「くの字型」プランという基本は保持しつつも、できるだけ戸数を増やし、効率よく住戸を配置したいところです。そこで、森に面した住戸と道路に面した住戸を設け、自然光を3方向から取り入れた中廊下でつなぐプランが生まれました。一時はくの字を太らせて三角形に近づけたこともありましたが、そうすると建物と森の間の木を伐らねばならなくなる。それを避けるためにフランス政府と協議を重ね、森に面した面がなるべく大きく取れるよう円弧状にして、道路側は面積を抑えるという、今のブーメランのような形に落ち着いたんです。

その一方で、大使館の担当者と一緒に森に入り、境界に生えた木の1本1本について、伐っていいか否かをチェックし、根はどこまで及んでいるか、枝はどれほど払ってもいいかを植栽の専門家とともに検討したうえで、剪定する木を慎重に決定しました。

容積率を高めるため、階層も1層増やしましたが、大使館側のプライバシーを考慮し、どの程度セットバックすればマンションからの視線が遮れるかを検討するため、実際の位置と高さまでクレーンを上げて確認しました。

すべての住民が森を享受できる共用スペースを

森側の住戸には奥行き最長3mの凹凸あるバルコニーを設けました。通常、バルコニーの奥行きが深いと、それを支える太い梁が目障りになりがちですが、施工会社の技術力によって、バルコニーの床と庇を兼ねた薄いスラブだけが突き出したシャープなデザインを実現しています。

手すりには透明ガラスを採用して森との一体感を高める一方、室内とバルコニーの間のサッシも段差をなくしました。中から外を見ると室内の床がそのまま延長されているように見え、文字どおり「アウターリビング」として活用できる空間です。

森側の住戸の眺めは申し分ありませんが、もう一つ気を配ったのは、道路側の住戸の入居者もできるだけ森が享受できるような共用スペースの確保です。

一つは屋上庭園で、眼下に森を見下ろしながら、東京タワーや六本木ヒルズも遠望できるビューデッキを設けました。また、吹き抜け越しに森が望めるエントランスホールはもちろんのこと、水盤のあるガーデンテラス、テラスと連続するパーティールーム、さらには風除室にもスリット状の壁面を設けるなど、随所から視線が抜け、緑がかいま見えるよう、工夫を凝らしています。

大使館と素材やモチーフを揃えて一体感のある街並みに

完成までには他にもいろいろなことがありました。この事業には富士見町会館の建替えも含まれていたのですが、町会館の着工直後には東日本大震災が起こり、マンションの着工を数ヶ月見合わせました。

また、旧大使館の解体直前には大使館側の提案で、ユニークなアートイベントが開催されました。日仏のアーティストたちによって、事務室、廊下、階段、中庭など建物内のあらゆる空間がアートで埋め尽くされたんです。解体スケジュールの調整は大変でしたが、普段はなかなか中に入れない敷地と建物を一般の方に見ていただけて、とてもよい機会だったと思います。

新しいマンションにもアートを積極的に採り入れるため、「有限の時」「森」「フランス」をコンセプトに、ここだけのためにオリジナル作品を創って、共用部のあちこちに配しました。

外観については、新大使館、町会館と同じ素材やモチーフを用いることで、連続性のある街並みを生み出しています。たとえば、コンクリート打放しの壁デザインやサインはその一例です。また、新大使館と向き合う壁面には、2種類の石を打ち込んで表面を水磨きにしたプレキャストコンクリート壁を採用し、大使館と呼応したデザインとしています。

デザイナーインタビュー

野村不動産 都市開発事業本部芝浦プロジェクト推進部 笹本 和孝

約7年がかりのプロジェクトにまつわるエピソードは尽きませんが、建替えや再開発事業はどれも息が長く、最初から最後まで携わることができたのは、今考えても幸運なことです。

リーマンショック後の市場に合わせた企画の練り直しは大変でしたが、このようなプロジェクトを担当できるチャンスはなかなかないので、逆に楽しくやれた部分もあります。

企業の枠を超えて一緒に仕事をしたメンバーも皆、「とにかく絶対成功させよう」というこの物件への強い思いを持った人ばかりでした。それだけに、完成を目にしたときは、これはチームみんなの結晶だと感じたものです。事業的には厳しいプロジェクトでしたが、あのときの感慨は何ものにも代えられません。

プラウド南麻布

所在地
東京都港区南麻布
交通
日比谷線「広尾」駅 徒歩7分
総戸数
88戸
竣工
2013年7月