兵庫県尼崎市JR塚口駅前にある大正10年創業の製菓工場跡の広大な敷地に、1271戸のマンションと戸建て、居住者専用の森、多世代が気軽に交流できる共用棟を建設。さらに、駅前にロータリーを設置して駅ビルや商業施設を誘致し、近隣住民への利便性も高めて緑豊かな「街」に転生させた「ZUTTOCITY」。
前編では、ずっと暮らしたくなる街を目指し「ZUTTOCITY」というコンセプトに至った過程と、その概要を紹介します。

1 「ZUTTOCITY」が生まれるまで

ZUTTOCITYプロジェクトの幕開け

大阪駅から電車で約10分、JR塚口駅を降りると、かつて目の前には大きな製菓工場がありました。大正10年創業のその工場からはいつもビスケットやチョコレートの甘い香りが漂い、桜の大木が並ぶ敷地は満開の時期になると近隣住民にも開放され、お花見客でにぎわったものでした。
総面積約8.5haという駅前の工場跡地を、野村不動産が再開発するにあたって、プロジェクトのメンバーには大きな使命感とともに、ある思いが芽生えました――せっかくのこの地に、単なる分譲マンションをつくるだけでいいのだろうか。
異例の社内コンペも開かれ、さまざまなプランが提案される中、ひとつのコンセプトが浮かび上がりました。
「ずっと住みたい街をつくる」
この信念を掲げ、ZUTTOCITYプロジェクトは幕を開けました。

“ずっと住みたくなる街”とは?

プロジェクトチームが最初に考えたのは、「ずっと住みたい街とは、具体的にどんな街なのか」という内容について。何度も話し合いが重ねられた結果、次のような要素へと絞り込まれていきました。

  • 交通の便に加えて、買い物のしやすさなど、住み心地につながる利便性の良さが備わっていること。
  • リフレッシュできる緑豊かな環境があること。
  • エネルギーの無駄を省き、住むだけでエコライフを実現できること。
  • 子育て世代から高齢者までがともに助け合えるコミュニティーが育つこと。
  • なにより「ここが私の故郷です」と愛着を持って胸をはれる街であること。

次に、これらの内容を実現する“街”づくりのための敷地全体の配置プランが練られました。社内コンペなどで提案されたプランは、全部でなんと57。その中から、商業施設や駅前ロータリーなどの街としての機能と、マンションや戸建てエリアがバランスよく配置、そのうえで敷地中央に「みんなの森」を配したプランが採用されました。

2 ずっと住みたくなる街づくり

「みんなの森」に託した願い

敷地の25%を緑地化したZUTTOCITYの中心には、約8,000㎡の「みんなの森」があります。
利便性や機能性だけを追求するなら、もしかするとそこには立体駐車場があった方がふさわしいのかもしれません。しかし、この大きさの土地だからこそできること、住む人の歴史を刻んでいける場所を残したいという気持ちから、あえて駅前に緑の生い茂る森をつくりました。それは、広大な緑の環境が住む人すべてにとってのやすらぎにつながると考えたからです。
子どもたちが思いきり遊び、家族の思い出が育まれる場所として、仕事帰りの疲れを癒す通過点として、そして住人同士のコミュニティの舞台として。
サッカーグラウンドよりも広い緑の森には、ゆるやかに小川が流れ、季節の花が咲き、製菓工場でお花見をした桜の樹が育ち、新しい暮らしを見守ってくれています。

奥行きのある街に

ZUTTOCITYはマンション3街区(1200戸)と戸建て71戸によって構成されています。そして、「みんなの森」を囲むように建つ住居棟は、よく見ると少しずつ角度がずれています。
考えてみると、街や道路というものは、どこまでも真っ直ぐではなく少し不自然にゆがんでいたりずれたりしているもの。そして、一戸建てや商業ビルや高層マンションが散在して街並をかたちづくっていくものです。
住む人すべてが心地よく暮らせるための街づくりを目指した結果、余白をあえて残すことで奥行きのある「街並み」ができあがりました。

1200戸のすべての世代が楽しめる場を

ずっと住みたい街とは、つまり住み心地がいいということ。そしてその住み心地の良さを大きく左右するのは、住民同士のコミュニティです。子どもから大人まで、すべての世代が気軽に交流し合え、ちょっとした楽しみを分かち合い、いざという時には助け合えるご近所づきあいができたら……。
プロジェクトチームがそんなコミュニティづくりのために考えたアイデアは、ZUTTOCITYを舞台に、すてきな人と人とのつながりを育み広げていく仕組み。住人同士でプランを立ててイベントを開催したり、子育て世代が気軽に先輩世代に相談できる関係を築くためには、まず出会いの場が必要です。そのための共用スペースが「ズットシティ・アメニティ・プラザ」です。まるで劇場のような外観をもつ二階建ての共用棟には、カフェラウンジ、キッズルーム、クラフトルーム、音楽スタジオ、多目的ルーム、フィットネスルームなどが完備。
アメニティ・プラザには屋上菜園や、ボール遊びのできるプレイグラウンドも併設しており、ライフスタイルや家族構成、趣味や特技に応じた幅広い使い方ができる、オールラウンドな設備を備えています。

駅からの景色を緑に変えた
メインストリート

駅前からZUTTOCITYの中央を貫く形で敷設されたメインストリートは、電線の地中化ですっきりと美しい並木道に。幅約2mの歩道に加え、緑地帯を挟んで敷地内にも歩道がつくられ、ベビーカーでのすれちがいも安心です。
駅前にはロータリーも新設。どのマンションの住居棟からも濡れずに行けるタクシー乗り場やバス停からは、市役所や病院への気軽な足も確保されています。
敷地北側にも、歩道と敷地の境界を取り払い、街路樹のある散策路を実現。周辺地域への緑の貢献が、より充実した地域コミュニティづくりの一翼を担っています。

地域一体で可能にした
白紙からの「街づくり」

新しい街をつくるにあたって、どうしても欠かせないのが暮らしに直結した施設。ZUTTOCITYでは、JR塚口駅と直結した駅ビルを誘致。カフェやレストラン、各種専門店、コンビニエンスストアなどが、毎日の行き帰りに欠かせない存在となっています。
また、生鮮食品から日用品までを豊富に揃えたスーパーマーケットもオープン。マンション内には保育施設も備えています。1時間からの一時保育もあり、子どもを抱いて通勤電車に乗る必要もなく、子育て世代を力強く応援しています。
さらに、これらの商業施設や駅ビルとともに「街づくり協議会」を設立。地域一体となってイベントを行うなど、愛着を持ち、安心して“ずっと住みたい街”をつくるための活動を続けています。
白紙の状態から新しい街をつくる……。「どんな街だったら住み続けたいか」を考え、生まれたアイデアを反映して完成したZUTTOCITY。そこには、遊び心いっぱいのさまざまな工夫が生かされ、コミュニティづくりのきっかけを演出しています。
後編では、「住み心地の良さ」を実現した具体的な設備やサービスについてご紹介します。

野村不動産株式会社 野村不動産関西支社 住宅カスタマーセンター エリア統括
新井 快

<プロフィール>
2014年、野村不動産株式会社入社。住宅事業開発部、住宅営業部、住宅事業推進部を経て、現在は関西支社住宅カスタマーセンターエリア統括を担当。

<グッドデザイン賞とは>

グッドデザイン賞は、さまざまに展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちの暮らし、産業、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。

受賞作品一覧はこちら

※掲載の情報は、2019年2月時点の情報です