日吉

渋谷と横浜の真ん中に位置する日吉は、緑を身近に感じる文教エリア。
駅周辺を中心に、今なお変化を続けています。
そんな日吉の街には、未来に向かう子どもたちの心を
大きく育む、大きな“遊び場”がありました。

1 日吉の街を歩く

歴史ある文教エリア・日吉は
さらに住みよい街へ進化を続ける。

日吉の街は、駅を中心に西側に商店街、東側に慶応義塾大学(以下、慶應大学)のキャンパスが広がります。秋には黄葉のトンネルになるイチョウ並木は、人気の絶景スポットです。地域とのつながりを大事にする慶應大学では、公開講座や「桜スポーツフェスタ」などのイベントを開催しています。2008年の8月には、綱島通り沿いに創立150周年を記念して協生館が完成しました。

協生館は大学院や図書館が入る複合施設で、1、2階部分が地域の住民に開放されています。レストランやスポーツジム、病院などが吹き抜けの空間に集まっていて、大学というよりモダンなショッピングモールのようです。2階の藤原洋記念ホールではコンサートやシンポジウムも開かれ、新たな文化交流の場になっています。

1,2階が一般に開放された協生館。イベントや展示会も開催される。

2023年3月までには相鉄と東急が直線でつながり、日吉駅から新横浜駅へのアクセスがさらに快適になります。駅の西側に放射線上に広がる5つの商店街でも、高級文具店やペットショップ、薪窯焼きのピザ店など新しい店がオープン。街の表情が少しずつ変わっています。

世代を超えた人々の交流として、駅の西口から伸びる日吉中央通りで開催されるフリーマーケットが「日吉楽市」。
2016年に始まった新しいイベントですが、たくさんの人で賑わい、恒例の催しとしてすっかり定着してきました。

浜銀通りのセブンイレブンでは、誰でも電気自転車を利用できるシェアサイクルが設置され、ちょっとした移動がとても便利になりました。
Tsunashima SSTの商業施設「アピタテラス横浜綱島」では、日吉・綱島・高田東エリアを対象に店内の食料品を自宅に届けてくれるネットスーパーのサービスが始まり、快適な生活をサポートしています。

食材にこだわり、パンからデザイートまですべて手作り。本格イタリアンを日常使いできる隠れ家レストラン。
「アクイロット」電話045-534-7714

5月27日、中央通りで開催されたフリーマーケット「初夏の楽市」
店主が、自分で調べ、使い、吟味した、こだわりの生活雑貨がそろう店。
「slow slow slow」電話045-534-9128 *取材時は作家展開催中

街に点在する緑が、
もっと多くの人に
親しんでもらえる存在に。

日吉は自然に恵まれた街として知られています。街を歩きながら、そんな日吉の緑に親しもうというイベントが毎年春に開催される「港北オープンガーデン」です。日吉の丘公園や日吉の森庭園美術館などの公共施設から、普段見ることのできない個人宅の庭まで、20近い緑のスポットが公開されました。 このイベントには、慶應大学も参加しています。日吉キャンパス内には、起伏に富んだ森が広がります。このエリアの環境保全活動をしているのが、大学の有志で作った「日吉丸の会」。日本の原風景である落葉広葉樹林の再生や、英国式のバタフライ・ガーデンの整備を進めているほか、地域住民も参加できる散策イベントを開催するなど、学外に向けても豊かな環境の魅力を発信しています。

日吉の街を一望できる高台にある日吉の丘公園。

2 未来への風

子どもたちの遊ぶチカラを
地域全体で支える、鯛ヶ崎公園プレイパーク。

約1万3千平方メートルの敷地内に雑木林や竹林などの自然が残り、住民の憩いの場となっている日吉本町の鯛ヶ崎公園。ここでは週に4回「プレイパーク」と呼ばれる活動が行われています。プレイパークとは子どもたちが思いのままに遊べるよう、できるだけ禁止事項をなくし、その自由な意志を地域全体でバックアップする取り組みです。

開催日は10時から17時まで、子どもたちは思い思いに公園内で過ごします。ロープやブランコで遊んだり、水浴びをしたり。泥遊びで洋服を汚しても気にしません。園内には子どもたちの遊びをサポートするプレイリーダーとボランティアの大人たちがいて、いつも見守っているので安心。ノコギリを使って工作をしたり、火をおこして焚火をしたりすることもできます。時間内であればいつでも、誰でも、予約の必要なく自由に参加できます。

この鯛ヶ崎公園プレイパークを仲間たちと立ち上げたのが、管理運営委員会の山口園子さんです。「日吉には自然が多く残っているのに、子どもたちが夢中になって秘密基地を作るような、思い切り遊べる場所が少ない。今の子どもたちは与えられたもの、枠にはまったことの中で育っていて、自分から楽しいことを見つけて遊ぶチカラも弱くなっているのでは、という思いもありました」

最初は日吉駅近くの箕輪の森(現在、日吉の丘公園)で月1回「アオバズクの会」を日吉のいろいろな子育てサークルに呼びかけて開催。日常的に子ども達が遊びに来られる場所をと、鯛ヶ崎公園に場所を移してプレイパークとして始めたのが1994年です。

管理運営委員会の山口園子さん(写真上)と漆原友子さん(写真下)。創設時からずっとプレイパークを支えてきた大切な仲間。

鯛ヶ崎公園のある日吉本町は昔から子ども会の活動も積極的で、教育への思いが強い地域でした。公園の周辺にある8つの小中学校の関係者も、プレイパークの主旨に賛同し、力になってくれました。「子どもたちが公園の竹で楽器を作って音楽会をやったら、みんな喜ぶのでは」というアイデアから「森の演奏会」という人気のイベントが生まれましたのも、中学校の校長先生の発案からでした。

毎日が新しい発見の連続です。と話すプレイリーダーのおかきさん。

「子どもたちを家庭という“点”だけでなく、地域のいろんな人たちが温かく見守る“面”で育てる。そんな思いによってプ レイパークは支えられています。日吉をはじめ周辺の街からも人が集まるこの公園は、大人たちにとってもつながる拠点なんです」

山口さんたちの思いは地域の枠を超えて広がり、2002年には横浜市でプレイパークを開いている人たちと「YPCネットワーク(横浜にプレイパークを創ろうネットワーク)」を設立。2006年には横浜市の放課後児童健全育成事業に認定されました。現在、横浜市内には25のプレイパークがあり、YPCネットワークから派遣されたプレイリーダーが常駐して子どもたちを見守っています。

5月27日に開催された「みんなDE外ごはん」。食材を持ち寄り、カレー作りです。

「自分でやってみる」から
始まるワクワクが、
子どもたちの心を大きくする。

トイレも遊具の倉庫も自分たちでペイントしました。

鯛ヶ崎公園プレイパークには、「自分たちが作る、自分たちの場所」というモットーがあります。「公園の遊具はできるだけ自分たちで、子どもたちも一緒になって作ります。ハンモックもロープの編み方に苦労しながら、みんなで手作りしたもの。三回目のトイレのペイントは、日吉台中学の生徒たちが自ら学校と交渉して描いたものなんですよ。作業中に地域の皆さんが集まって来て、気づけば見学者でいっぱいになったのも素敵な光景でした」

道具の使い方はお兄さんが教えてくれます。

「こどもの本のみせ ともだち」が中心となって毎月第4火曜日に開催される野外おはなし会。

「自分たちで作る」というモットーの集大成が、毎年3月の第4土曜日に開催される「ぴよ鯛まつり」です。今年で24回目を迎えたこのお祭りは、手作りのお菓子やグッズが並ぶ出店とステージがあり、準備から片付けまでを子どもたち自身が仕切ります。もちろん大人も参加して一緒に楽しみますが、材木を使って店舗を作るのも、商品の企画を考えるのも、主役は子どもたち。今年は山口さんのお孫さんもお店を出したり、スタッフのお孫さんが場内整備をしたりと母娘孫の三代でお祭りを楽しんだそうです。

今年3月、大盛況の「ぴよ鯛まつり」。もう24回目になります。

「自然を感じながら思い切り体を動かしたり、自分で考えたことを工夫しながら形にしたり。プレイパークを通して得られるそんなワクワク体験が、子どもたちの体と心を大きく育むのだと思います。その成長を見守り、サポートする大人たちの姿も、いつも頼もしく眺めています。この遊びの場が子どもたちの、そのまた子どもたちへと、ずっと引き継がれていくことが夢ですね」

文教の地として長い歴史を持つ日吉の街。住民と街のコミュニティが連携して育んだプレイパークは、子どもの遊ぶ力を育てる環境作りと、子どもを見守る地域作りの理想形として周辺の地域にも広がり、大きなネットワークになっています。

今年24年目の春を迎えた鯛ヶ崎公園プレイパーク。そこに集まる人々の思いは、未来へとつながっていきます。

鯛ヶ崎プレイパーク
神奈川県横浜市港北区日吉本町5-62

写真:薮崎めぐみ

3 街のおさらい

※掲載の情報は、2018年6月時点の情報です