江東区中央部 航空写真

MARKET ANALYSIS

利便性と価格のバランスを重視 江東区中央ゾーンに注目

東京圏の2016年は大幅供給減。初月契約率も70%を割り込む。

2016年の新築分譲マンション市場は、2017年4月に予定されていた消費税率アップの延期や、住宅ローン金利が若干上昇した影響などもあり、盛り上がりにかけるものとなりました。東京圏(23区、都下、神奈川、埼玉、千葉)の2016年の新築分譲マンションの供給戸数は3万5772戸で、前年よりも11.6%減少しました。中でも東京23区は1万4764戸にとどまり、前年よりも20.1%も減りました。2013年の2万8340戸と比較すると5割近く少なくなりました。東京圏の初月契約率は、好調と言われる70%を7年ぶりに割り込み68.8%に留まりました。
この大きな要因は価格の上昇でしょう。平米単価は前年比1.8%アップの79万3000円となり、バブル期の1992年(82.2万円)以来の高値になりました。もっとも平均価格は前年比マイナス0.5%の5490万円に下落しています。平米単価が上昇しているのに平均価格が下がったのは、平均面積が減少したからです。69.22㎡で前年よりも2.2%も減っています。2016年、マンションディベロッパーは、販売価格は上げられないと考えて、面積を削減することによって顧客を減らさない戦略をとったことがデータで読みとれます。

平均面積と平均価格の推移/東京23区

実質重視の中で、利便性の高い江東区に注目。

距離圏概念図

こうした状況の中、消費者のマンション選びにも変化が見られ始めました。それは実質的な利便性を重視する傾向です。従来は、立地に関して「イメージ」や「ブランド性」といった要素もかなり意識していたのですが、ここまで価格が上がるとそんなことは言ってはいられません。利便性も高く、イメージがよくブランド性もある立地の物件は高すぎて手に入れることは難しくなった結果、まずは利便性が高い物件を選ぶことを最優先するようになってきたのです。
そうした意味で注目される立地の1つが、東京23区でいえば江東区です。江東区は、日本最大の業務地域である千代田区の大手町・丸の内、中央区の銀座・日本橋といった場所から、実際の距離では非常に近い場所です。JRや地下鉄も数多く走り、交通利便性という面では23区の中でもかなり優位にある地域です。しかも、もともとある程度の商業集積はできていたことに加えて、近頃は大型店舗も充実したことによって、生活利便性も向上しています。従来から人気のある世田谷区、杉並区といった23区の西側と比較しても利便性という面では引けを取らない立地です。
実は江東区にある建物の用途別面積の構成比を見ると、1985年時点では住宅・アパートが60.2%、工場・倉庫が30%で、事務所・店舗等は7.1%しかありませんでした。同時期の23区平均は、それぞれ、69.1%、11.4%、17.0%。つまり、23区の中では工場が非常に多く、店舗や事務所は少ない地域だったのです。それが2015年のデータでは、住宅・アパートは58%でほとんど変わらない比率ですが、工場が半分近くの17.8%にまで減っています。代わりに事務所・店舗が21.8%にまで増加しています。約30年で、店舗やオフィスが大きく増え、街の成り立ちも大きく変わったのです。

割安感が残るのは中央ゾーン。おしゃれな米国発コーヒー店も進出。

富岡八幡宮

image photo

江東区には、JR総武線が走る北側ゾーンと、都営新宿線や東西線などが走る中央ゾーン、南側の湾岸ゾーンの3つがあります。
北側ゾーンは亀戸という昔からの商業地を抱え、東京都も副都心の1つとして整備に力を入れてきたこともあって、かなり以前から不動産価格もそれなりに高くなっていました。また、大規模な開発用地はそれほど多くはなく、魅力的なマンションの供給余地はそれほど大きくはありません。
一方、大規模な開発用地に恵まれた湾岸ゾーンは豊洲を中心に、マンション供給が急増し、近年、不動産価格が急上昇してしまいました。次々、建設されるタワーマンションの価格は、都心のマンションの価格と同水準に近づき、かなりの消費者にとっては手が届きにくくなっています。
そんな中で、実質的な利便性と価格のバランスを重視する消費者に特に注目されているのが中央ゾーンです。この地域は、多くの地下鉄が走り、交通利便性が高いわりに、まだ少し割安感を感じるマンションが供給されている立地だからです。近年は大江戸線開通や半蔵門線の延伸で、都心からのアクセスがより向上しています。今後は、湾岸ゾーンと同様に不動産価格が上昇し、資産価値もより上がる可能性があります。湾岸ゾーンほどではありませんが、北側ゾーンと比べると開発余地も残されています。
中央ゾーンは、門前仲町のような江戸時代から栄え、老舗店を抱える商業街や、木場公園や清澄公園といった緑あふれる空間があることも魅力です。最近、清澄白河には米国の有名コーヒーチェーン「ブルーボトルコーヒー」が日本1号店を出店したことが大きな話題になりました。スターバックスコーヒーやタリーズコーヒーに飽き足らないコーヒー好きが集まる店として有名な同チェーンが日本初出店場所に選んだということは、江東区中央ゾーンのたたずまいが評価されたということでしょう。

石澤卓志

PROFILE

石澤卓志

みずほ証券株式会社 市場情報戦略部 上級研究員

1980年代より一貫して不動産市場の調査に携わる。国土交通省・社会資本整備審議会の委員をはじめ、自治体、経団連などの委員や専門委員、国連開発機構技術顧問、上海国際金融学院客員教授などを歴任。テレビや新聞などでコメンテーターとしても活躍。

※出典元:折込広告情報誌「日経便」

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