

時と共に深まるデザイン
グッドデザイン賞
製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、かたちのある無しにかかわらず、
理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえその質を評価するグッドデザイン賞。
2026年度は野村不動産グループで5プロジェクト受賞いたしました。
プラウド美しが丘ヒルサイド
多摩田園都市の地形を継承する南傾斜地に建つ住まい。歩行者目線に配慮した浮遊感あるファサードデザイン、奥行あるテラスと地下住戸の快適性プライバシーを両立する窓先空地と地階を感じさせない開放的な中庭の計画で、傾斜地ゆえの課題を街並みへの調和と居住者の快適性へ転化した、自然と建築美が響き合う邸宅を提案。
審査委員の評価
傾斜地の集合住宅は、擁壁による圧迫感と地下住戸の居住性という二つの計画的難所を同時に抱える。この計画は、そのどちらも地形を均すことで消さず、傾斜そのものを資源として引き受けたことにまず価値がある。多摩田園都市が積み上げてきた作法を、事業用の集合住宅の側から受け継ごうとする姿勢に見習うべき点がある。 地下住戸では、レベル差を持つ窓先空地によって最大約5mの奥行を確保している。平均地盤面の設定という法規上の条件と、テラスの寸法という居住性の要求を同時に満たす操作であり、断面の検討を相当に重ねた結果と推察される。躯体擁壁のスリットも、採光と視線遮蔽に加えて歩行者側のシークエンスに変化を与える効果を兼ねており、一つの操作を複数の目的に効かせる判断が賢明である。 ファサードでは、上下の分節に加えてマリオンの並びに変化をつけ、長手のボリュームを崩している。間口の広い敷地が街に与える影響を自覚した上での抑制であり、低層住宅地の尺度への配慮として好ましい。 住人の出入りを外から遮る設えも周到である。派手さを求めず、静けさという評価しにくい価値に手数を割いた計画として支持したい。
プラウドシーズン代沢
北沢川緑道の桜並木に面した世田谷・代沢の邸宅地に、3棟を一体の建築として構成した『三邸一景』の分譲戸建住宅である。間口の限られた敷地条件のもと、集合住宅のような統一感と戸建ての個性を両立させた外観デザインを核に、住まい手と街の双方にとって風景となる都市邸宅を目指した。
審査委員の評価
土地の細分化に伴って、建売住宅固有の輪郭とスケールの住宅が建ち並ぶ風景を目にすることは多いが、ここでは3棟の分譲戸建住宅を、連続的なまち並みであることを超えて、より一体的な表現が目指されている。屋根を見せないことで立面を強調し、バルコニーのマリオンとスラブによるグリッドを連続させることによって、前面に連なる桜並木に呼応する連続的な景観を作り出した。どこか一つの集合住宅のようにも感じられる住戸の関係性は、戸建てならではの独立した居住性と、街区全体を使った面的な価値づけを両立している点が評価された。
オウカス浦和針ヶ谷
自立高齢者向けの新しい住まいとして、地域の歴史の継承とハード・ソフト両面から、健康維持・増進とその先の生きがいづくりを目指す賃貸シニアレジデンス。高齢期の住まいが施設化・隔離化されがちな社会的傾向に対し、回遊動線や中庭、地域に開かれた共用空間と、緑との共生を通じて、人と自然と地域の関係を編み直す住環境をデザインした。
審査委員の評価
地域の歴史や文化を丁寧に読み解き、未来へ継承するデザインへと昇華させた高齢者住宅であり、その姿勢は高く評価できる。 閉鎖的で地域との関わりが希薄になりがちな、高齢者住宅が抱える課題に対し、地域に開かれたカフェや中庭を設けることで、高齢期においても人々や地域との関わりが自然と継続する環境を実現している点も評価したい。 木質化された軒が連なる外観は温かみがあり、周辺の街並み形成にも寄与している。さらに、地域のシンボルであったキンモクセイの大樹を中庭に移植・保存し、豊かな緑に包まれた外構計画を実現している。これらは住環境の向上と地域の記憶の継承を両立するものであり、地域との良好な関係が今後も継続していくことを期待している。
BFS LOUNGE SHIP/LX56AZ
ベスト100受賞作品

大規模複合開発「BLUE FRONT SHIBAURA」から水辺体験にシームレスにつなぐラグジュアリークルーザー。都心運河に対応した流麗なローフォルムと、視覚的シンメトリーを備えた内装や大開口窓で、上質な空間を実現。モビリティの枠を超え、都市体験を水上へ拡張する「動くラウンジ」として、新たな水辺のライフスタイルを創出。
審査委員の評価
単体の船舶としてではなく、BLUE FRONT SHIBAURAという街と東京湾を連続させる「動くラウンジ」としてデザインした点が非常に興味深い。ヤンマーによる船づくりと、フェアモント東京の世界観につながるインテリアを融合することで、移動・滞在・眺望という異なる体験を一つにまとめている。特に都市の水辺を裏側ではなく新たな正面として捉え、船から東京を見るという視点そのものを体験価値へ変換している点を評価したい。プロダクト、空間、サービス、都市開発を横断し、新しい舟運文化まで提案するスケールの大きなデザインである。
TETSUORI
本製品は国内の製鉄所で製造された高品質な板金素材の副産物に着目したプロダクトシリーズ。規格外ゆえに使用が限定されていた高品質な素材を活用し、生活空間に馴染む道具として再定義。薄板を正確に折り込む独自の技術と共通寸法設計を活かし、ホテルやオフィスの備品として日常に資源の新たな循環を形にした。
審査委員の評価
本製品は、板金加工への深い知見をもとに、一枚の鉄板をパズルのように折り、組み合わせることで、シンプルで美しい形を成立させている。曲げRや継ぎ目、端部、部材の重なりなど、板金製品では弱点として現れやすい部分を、折りの構成とプロポーションによって巧みに整理し、造形の一部へと転換した点が秀逸である。端部や接合部の仕上げも美しく、薄板を正確に加工する技術と製品全体の高い精度がうかがえる。加工上の制約を隠すのではなく、デザインによって端正な佇まいへと昇華した、完成度の高いプロダクトシリーズである。




