名古屋駅と栄の間にある納屋橋に、29階建てのタワーレジデンス「プラウドタワー名古屋栄」が完成しました。総戸数347戸のマンションの足もとには、スーパーマーケット、医療施設、銀行などが入った複合施設もある、まさに「暮らす都心」です。
前編では、住・職・食・学が揃った「テラッセ納屋橋」で実現した新しい「快適さ」と、長い歴史を経て復活した「まちの賑わい」についてご紹介します。

1 コンパクトシティ誕生

名古屋の中心地に
新しいコンパクトシティが誕生しました。

地元の人が「名駅(めいえき)」と呼ぶ名古屋駅周辺はビジネスの中心地。そこから東に約2㎞の位置には、繁華街「栄」があります。この二点のちょうど中間に位置するのが「納屋橋」です。 東西を走る広小路通と南北に流れる堀川が交差する「納屋橋」の東南岸。敷地面積1万㎡という複合施設「テラッセ納屋橋」は、住居棟「プラウドタワー名古屋栄」のほかに、スーパーマーケットやスポーツジム、大学の地域交流センター、レストランやクリニックが入る店舗棟、そして新聞社や銀行が支店を構えるオフィスビルなどで構成されています。

プロジェクトを担当した野村不動産開発企画本部の森祐輔

フランス語で“テラス”の意味を持つ「テラッセ」という名が示すとおり、堀川沿いの遊歩道から店舗棟へと続く、広々とした三層ものテラスが特徴。マンションに暮らす住人や、オフィスビルへの通勤者だけではなく、近隣住民にも広く開かれた憩いの場として活用されています。

現在の納屋橋は、1913年に改修された時のアーチや欄干をそのまま使い、1981年に架けかえられたもの。橋のたもとには、大正時代の面影を色濃く残す貿易会社・旧加藤商会の本社ビル(現在は国の登録有形文化財に指定)が建ち、レトロな景観が人気です。
土地の記憶を受け継ぐ意味で、「テラッセ納屋橋」も、歴史的な建物や橋のディテールや色調をデザインに取り込んで、歴史的景観にマッチするよう工夫されています。

「都会に暮らす」という画期的な試み

「テラッセ納屋橋」の一番の特徴は、名古駅から歩いて15分、栄までも徒歩圏という立地の良さ。まさに大都会の中心地だからこそ画期的な試みとなったのが、「都心に暮らす」というテーマです。
もともと名古屋は車社会で、居住地は郊外へと広がっていました。しかし、少子高齢化の影響もあって都心回帰の傾向が強まり、納屋橋周辺にもマンションが増えつつあります。都心の人口が増加すれば、商業施設や教育機関、医療施設、文化施設などが必要になってきますが、まだ追いついているとはいえません。
こうした課題に対するひとつの答えが、複合施設である「テラッセ納屋橋」です。

「テラッセ納屋橋」では、高齢者から子どもまでが、車を利用することなく日々の暮らしを営めます。住居と同じ敷地内で、働く、学ぶ、遊ぶを実現した多機能コンパクトシティ――今までの名古屋では定着しづらかったエコシティの試みを形にしたのが、この「テラッセ納屋橋」なのです。

2 そもそも、納屋橋エリアとは?

かつては繁栄を誇った蔵町の賑わいを
もう一度取り戻したい。

官倉に買米を納めるの図(出典:尾張名所図会)

「テラッセ納屋橋」が面している堀川は、今から約400年前、名古屋城が築かれた時に開削されたという運河。江戸時代には、尾張藩城下町に米や乾物を運ぶための水路として使われました。納屋橋という名前の由来も、今「テラッセ納屋橋」となっているあたりに尾張藩の米蔵(納屋)があったからという説が残されています。
明治に入ってからは、名古屋駅と栄とを結ぶ市電が納屋橋の上を走り、橋の周辺には瀟洒なビルや映画館が建ち並び、名古屋を代表するアミューズメントゾーンとして栄えていきます。

ところが、1971年に市電が廃止され、地下鉄の路線からもはずれてしまったことから人の流れが変わり、納屋橋は少しずつ活気を失い始めてしまいます。
1986年、市制100周年の記念事業として、名古屋市は堀川を浄化し、遊歩道を整備する計画を発表。納屋橋エリアをもう一度蘇らせようという再開発計画が始まりましたが、バブル崩壊と2008年のリーマンショックにより計画は延期。
2014年、三度目となる再開発計画がスタート。「納屋橋のにぎわいを取り戻したい」という、野村不動産、NIPPO、三菱地所レジデンス、三井物産、ユニー、清水建設、大日本土木などが一体となって、2017年にようやく実現されたのでした。

3 賑わいを取り戻すために

“暮らす都心”で賑わいを取り戻し、
賑わいを作り出す。

「テラッセ納屋橋」に託された願いは、「かつての賑わいを取り戻す」ということと、「新しい都心の暮らしならではの、現代の賑わいを作り出す」ということ。それは、かつての繁華街としての賑わいではなく、住む人、働く人、憩う人たちが安心して過ごせるための、健全な「賑わい」です。
では、その「賑わいを作り出す」ためには何が必要なのか――。開発を通して導き出されたのは、
①地域に開かれた、人びとが集まり憩える場所作り
②マンション住人と企業、店舗が互いに協力し合って活動するための組織作り
③組織を円滑に運営し、場所と人を有効に活用するためのアドバイス
というものでした。

マンション住民と商業施設が手を携えて、テラスを使ったイベントを開催したり、かつての集会所のような機能を持った「エリアマネジメントオフィス」を設置したり……。
竣工から2年を経た現在も、交流会が盛んに開催され、進化を続けています。
後編では、その具体的な活動内容についてご紹介します。

森祐輔

<プロフィール>
2016年、野村不動産株式会社入社。現在は、開発企画本部建築企画部企画一課課長。

<グッドデザイン賞とは>

グッドデザイン賞は、さまざまに展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちの暮らし、産業、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。

受賞作品一覧はこちら

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※掲載の情報は、2019年10月時点の情報です
※一部、表現に誤りがありましたので訂正いたしました