グッドデザイン賞受賞レポート「コトノマ」〜新しい「コト」が起きそうな、ワクワクする半屋外空間〜

かつて、日本の家屋には“縁側”や“土間”といった、室内でもなく庭でもない空間がありました。通りすがりに家の中と外で声を掛けあったり、ちょっとしたお裾分けを置いていったり。雨の日にも作業が続けられ、家の外から中の人へと気軽にアプローチできる、社会と住宅の中間領域です。
そんな空間を、現代の暮らしにふさわしくアレンジしたのが、「コトノマ」と名づけた半屋外空間です。野村不動産が手がける分譲一戸建て「プラウドシーズン府中緑町」に設けられた「コトノマ」――現代における“縁側”が、どんな思いから生まれ、どのように活用されているのかをご紹介します。

1 地域の人たちが気軽に立ち寄れる空間

休日は夫婦で日帰りツーリングに出かけるのが楽しみというご夫婦。次はキャンプツーリングにも挑戦しようと、テントやシュラフ、ランタンや簡易クッカーなどを少しずつ買い揃えているとか。休日の午後、「コトノマ」で愛車のメンテナンスがてら、ガスバーナーでコーヒーを煎れていたところを、香りに気づいたジョギング中のご近所さんが声をかけてきました。
「おや、自転車のメンテナンスですか?」
聞けば同じく自転車が趣味だとか。「プラウドシーズンの会」で顔見知りとなっている気安さもあり、生け垣越しにひとしきり話が弾みます。

2019年3月に完成した「プラウドシーズン府中緑町」全22戸に設置された、玄関アプローチからそのまま続く半屋外空間。それが「コトノマ」です。
街路側には生け垣があり、風通しは良いけれど適度にプライバシーも確保されています。
屋根があるので雨の日でも自転車のメンテナンスに集中でき、戸外なのでバーナーも使用可能。
つまり、「コトノマ」とは「いろんなコトを可能にする間」という発想から生まれた、パブリックとプライベートの境界スペース。
明確に外や内とは分けられない、使い勝手の良い空間なのです。

2 お客様のニーズから生まれた「コトノマ」

従来の一戸建て住宅では、外の世界との緩衝地域としてできるだけ広い庭を確保するのが常識でした。でも、今はファミリー層の大半が共働き。庭の手入れを完璧に続けるのは負担が大きすぎるという声が増えてきました。また、防犯設備の行き届いたマンションからの住み替えを考えたとき、一戸建てならではの防犯対策が重要な関心事になります。

これらの問題を解決する手段としても、「コトノマ」は大きな役割を果たしています。プライバシーを確保しつつも、人の気配を感じられる「コトノマ」が設けられていることで、住民どうしのコミュニティが自然と生み出され、部外者の侵入を防ぐ効果を発揮するのです。夜間には、「コトノマ」に取り付けられた人感センサーによるダウンライトが、不審な動きを見張ってくれます。

玄関アプローチから連続してつながり、土足のまま入れる現代の縁側「コトノマ」だからこそ、その使い道は多種多様。たとえば、宅配便の置き場所としてロッカーを設置するのに最適です。今後は「置き配」が主流になってくることも予想され、なくてはならない機能になりそうです。

また、水栓完備なので、夏にはこどもたちの水遊びの場として活躍しそう。趣味の陶芸や木工細工などの場所としてもうってつけで、一角に小さなテーブルと椅子を置けば、風を感じながらお茶の時間も楽しめます。リビングルームとも続いている「コトノマ」なら、室内では汚れが気になる子どもたちの絵の具遊びも、家族一緒に楽しめるのです。

3 街をつなぎ、人をつなぎ、安心をつなぐ

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全22戸に「コトノマ」を設置した「プラウドシーズン府中緑町」には、暮らしを快適にし、街と人とをつなぐいくつもの工夫が施されています。
まず間取りとしては、あえて南側に庭を造るというこだわりをなくしたかわりに、住居の中心付近に吹き抜けを設け、十分な採光を確保しました。また、生け垣から「コトノマ」を通して吹き込む風は、夜間でもシャッターの採風口を通して吹き抜け部分の窓へと抜け、気持ちの良い換気を行えます。

閉鎖的な石積みの塀やフェンスではなく、生け垣が配置された街並みは、防犯機能に加えて景観としての価値も高める結果に。気になる生け垣の手入れについては、お引き渡し後の1年間に2回(*1)、プロの植木屋さん(*2)による植栽管理の手ほどきが受けられます。どの時期にどんな手入れをするか、実際に見ながら学べる機会を通して、植栽への理解と愛情を深めることができるのです。

*1:1回目はアドバイス、2回目はアドバイスに加えて軽剪定
*2:プラウドガーデンパートナーズシステムは、ガーデニングのプロが定期的に訪問してお庭のお手入れなどをアドバイスするシステムです。お引き渡しから1年間のみ(無料)。関西エリアでは「ガーデンアドバイス」、名古屋エリアでは物件により名称やサービス内容が異なります。

住みやすさや防犯面での支援としては、全22世帯が加入する街区住民の会「プラウドシーズンの会」が組織され、コミュニケーションが図られています。入居が始まった2019年3月の翌月には会が発足し、この会を通して住民どうしが互いに知り合うきっかけとなり、地域コミュニティが自然に醸成されています。
さらに、5年間の巡回警備も保証され、街区全体が夜間自動点灯システムによってライトアップされることで、防犯機能と同時に、夜も美しい景観を実現しています。

新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちの生活は大きく変化しています。少し前までは仕事は外、団らんは家で、と役割がはっきり分担されていましたが、リモートワークの増加にしたがい、家という空間に求められる機能は格段に多様化しています。
家の中でもオンとオフを切り替えられるスペースが必要になってきた今の時代に、工夫次第でさまざまな使い方ができる「コトノマ」のような空間は、ますます活躍するはず。野村不動産では、これからも一戸建てシリーズ「プラウドシーズン」において、「コトノマ」の可能性をさらに追求していく予定です。

<グッドデザイン賞とは>

グッドデザイン賞は、さまざまに展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちの暮らし、産業、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。

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※掲載の情報は、2021年2月時点の情報です