プラウドが生まれる街荻窪

文人が多く暮らす別荘地として発展した荻窪の街。今でも当時の洋館が庭園やギャラリーとして活かされ、街に風情を残しています。3路線で都心に直結できるアクセスの良さと、18もある商店街で、暮らしやすい街として注目される荻窪。この街には、100年前のピアノを蘇らせ街を活性化しようとする人たちがいます。

1 荻窪の街を歩く

都心と郊外の中間で、両方の良さを
暮らしに活かす文人の街・荻窪

タウンセブン屋上の「あおぞらぱーく」

暮らしやすさと郊外のゆとりのバランスがよいとして人気の杉並区。その中で最もアクセスに優れているのが荻窪です。JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線、しかも丸ノ内線は始発駅です。

荻窪駅北口周辺

暮らしやすさといえば、買い物のしやすさ・楽しさも気になるポイントです。荻窪はショッピングの街の顔も持っていて、荻窪地区には18もの商店街があります(杉並区商店会連合会のウェブサイト調べ)。たくさんあるということはどの店もオンリーワンの魅力を備えているということで、それは実際に街を歩いてみるとわかります。「ルミネ荻窪」や「タウンセブン」といった大型店舗があるかと思うと、周囲には小粒ながら魅力が光る店が肩を並べています。扱う品物も、食料品、日用品、ファッションと、多種多様。飲食店も、例えばカフェだけ取り上げても、レトロな喫茶店あり、ハンドドリップのカフェありと特徴的です。北欧テイストのカフェ「イストゥット」は旅好きの夫妻が始めた店で、店主自ら買い付ける北欧ヴィンテージ雑貨の販売もしています。

Una casita ルミネ荻窪店
イストゥット

揚げたて総菜の「さとうコロッケ店」といった老舗が変わらず人気を保っている傍ら、新しい店が次々と開店するのも荻窪ならでは。「ルミネ荻窪」は昨年11月に7店舗がニューオープンし、3店舗がリニューアルしました。商店街にも話題の新店舗が生まれていて、例えば「東京スパイスミュージアム」は、デイタイムは世界中のスパイスを販売し、夜はスパイスを使ったお酒や料理が楽しめるバーになる店。歩くたびに新しい発見がある街です。

文禄堂 荻窪店
東京スパイスミュージアム

なぜ荻窪はこのように豊かな街になったのでしょうか。それは歴史をひもといてみると理解できます。荻窪は明治から昭和初期にかけて著名人御用達の別荘街・住宅街で、与謝野鉄幹・晶子や井伏鱒二といった文化人も居を構えました。現在は、駅南口の賑やかな商店街を抜けると落ち着いた住宅街に変わり、かつての著名人の屋敷を活かした公園が点在しています。歴史に触れ、緑に親しむ。その日常が、この街に暮らす人の心を癒やし、活力を与え、それが街の豊かさに繋がっているのでしょう。

2 新しい風

100年の余韻を残すピアノが奏でる
クラシックの街・荻窪のメロディ

「西の鎌倉、東の荻窪」と謳われ、著名人の邸宅が連なっていた荻窪。かつての邸宅のいくつかは現在は美しい庭を活かした公園となり、地元の人々に親しまれています。その代表といえるのが「大田黒公園」。荻窪駅南口から歩いて10分ほど。立派な門の向こうに、樹齢100年を越える巨木が茂り、池に鯉が遊ぶ庭園が広がっています。

大田黒公園のイチョウ並木

「ここは『日本初の音楽評論家』といわれる大田黒元雄さんの邸宅跡を公園にしたものです。氏は1979年に亡くなられましたが、ご遺族が敷地の1/3を杉並区に寄贈され、整備の後、1981年10月に開園しました」

こう語るのは、大田黒公園の所長を務める伊藤義久さん。杉並区在住、大田黒公園に関わって10年の伊藤さんは、公園のこと、荻窪界隈のことをよくご存知です。

大田黒記念館(国登録有形文化財)
写真の池とあずま屋の他、茶室もある

「大田黒さんはここに当時としては珍しかった洋館を建て、仕事部屋として使っていました。現在は記念館として公開しています」

室内を拝見すると、そこは素晴らしい空間。寄木の床に、高い天井、パステルカラーの壁紙。大きな窓から美しい庭園が見渡せます。そこで存在感を放っているのが寄木細工のグランドピアノ。1900年製のスタインウェイで、大田黒氏が1917年に購入したものです。

所長の伊藤義久さん
1900年製のスタインウェイ
故大田黒元雄氏。右は氏が当時自室で開催していたサロンコンサートのプログラム

「ピアノは公園開園後しばらくは展示されるだけでしたが、ボランティアの皆さんの力で修復され、本来の音を取り戻しました。現在は年に4〜5回程度、ここでコンサートを開いています。音響的に優れているようで、音が素晴らしいと好評なんですよ。お客さんだけでなく、演奏者にも『光栄だ』と喜ばれています。このピアノ、ロシアの作曲家・プロコフィエフが弾いたこともある、歴史的なものなんです。プロコフィエフは大田黒さんと親交があって、日本を訪れた際に大田黒さんを訪ね、このピアノで演奏を披露した、ということです」

家具や蓄音機も当時のもの

クラシック音楽で
荻窪の街づくりを

コンサートで最も規模の大きいものが、毎年11月のコンサート。これは荻窪の街を挙げてのイベント「荻窪音楽祭」のひとつとして開催されています。窓から見える色づき始めたモミジをバックに聴く妙なる調べ。忘れられない体験です。

大田黒氏は、このピアノを友として仕事に励み、また、来客に演奏を披露したり、サロンコンサートを開いたりもしていました。荻窪のこの部屋が、文化交流の場にもなっていたのです。そして今、大田黒氏が住み・愛したこの荻窪は、街全体が音楽で交流する場所となっています。日本フィルハーモニー交響楽団のフランチャイズ「杉並公会堂」から、名曲喫茶、ギャラリーまで、大小さまざまな30もの会場でコンサートが開かれる「荻窪音楽祭」。生涯をかけて日本に西洋音楽を紹介し続けた大田黒氏が蒔いた種がこの街で花開いています。

杉並公会堂

大田黒公園は音楽だけではありません。巨木を活かしたツリークライミングの講習会などの子ども向けのイベントや、竹灯籠が幻想的なお月見の会、ミニ門松づくりなど、ほぼ毎月イベントを行っています。
「なかでも11月末から12月初旬の紅葉ライトアップは大人気です。ぜひいらしてください」と伊藤さん。

お月見の会
紅葉ライトアップ

大田黒公園の他に、近くには俳人・角川源義氏の旧邸を整備した「角川庭園」があり、政治家近衞文麿の別邸「荻外荘」の公園整備も進んでいます。音楽、文学、歴史。「文化の街」荻窪は、さらに発展を続けます。

撮影:薮崎めぐみ

協力:杉並区立大田黒公園

3 この街の物件はこちら

※取材の内容は2020年3月時点のものです。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響により、掲載内容や営業状況などが変更となる場合がありますので、ご了承ください。