新宿駅まで直通20分の向ヶ丘遊園は、都心へのアクセスの良さと豊かな自然がもたらす快適さが両立する街。幅広い世代から「住みたい街」として注目され、新しい話題にも事欠かない街、向ヶ丘遊園を歩きます。
小田急線の向ヶ丘遊園駅を降りて、まずは北口へ。駅前は現在再開発の真っ最中で、生まれ変わるのが楽しみです。駅前を抜けると商店が並ぶ便利なエリア。野菜たっぷりのランチとヴィーガンスイーツが人気のカフェ「フェットルマルシェ」、ブルックリンをイメージした「ベッドフォードアベニューカフェ」や、パリ仕込みのブーランジェリー&パティスリー「セテュヌ ボンニデー」、など、魅力的な店が目に付きます。
駅に戻って南口へ。駅前にはシンボルツリーを囲むように商店が並んでいます。スーパーマーケットのライフは深夜24時まで営業。作家もののハンドメイド雑貨などが並ぶ「サニーデイズ」はいつ訪れても新鮮な品揃えです。賑やかな商店街を抜けると府中街道。このあたりから落ち着いた住宅街の色が濃くなります。その先にあるのが広大な緑の森「生田緑地」です。
生田緑地は川崎市内最大の都市公園。東京ドーム約25個分ものエリアに「川崎市立日本民家園」「かわさき宙(そら)と緑の科学館」「川崎市岡本太郎美術館」(2022年10月時点改装の為、休館中)「川崎市 藤子F・不二雄ミュージアム」などが点在しています。
桜、花菖蒲、紅葉など、四季折々の自然を身近に感じることもできるのも生田緑地の魅力といえ、向ヶ丘遊園の街に暮らす歓びでもあります。きれいに整備された芝生が広がる広場では、子育て中のファミリーが休日を堪能し、それをあたたかな眼差しで見つめるシニア夫妻。多くの人々が集うこの公園は、世代をつなぐ場所にもなっています。
向ヶ丘遊園という駅名は、かつてこの地にあった遊園地の名前を残したもの。園内を花が彩る遊園地は「花と緑の遊園地」といわれ、訪れる人たちを優しい気持ちにさせてきました。2002年に閉園しましたが、遊園地が発信していた、自然の美しさ、慈しむ心、それが人々にもたらす優しさは、この街に連綿と受け継がれているのです。
向ヶ丘遊園は専修大学と明治大学の学生街としての顔もあり、それが街の活気に一役買っています。2024年には地域に親しまれてきた旧ダイエーの跡地に新しい商業施設がオープン。ショッピングモールや温泉施設、グランピングサイトを作る計画も進行中です。向ヶ丘遊園は変わり続け、さらに魅力的な街となりますが、この街に漂う優しさは、街の魂が宿る生田緑地がある限り、いつまでも続いて行くでしょう。
※計画は、今後変更になる可能性があります
11月8日(2022年)は皆既月食。天体ショーをきっかけに宇宙や科学に興味を持たれる方は多いのではないでしょうか。子どもの心に芽生えた探究心は生涯の糧となり、大人にとっても、未知の探求は日々の暮らしを活性化させてくれます。向ヶ丘遊園の街には、そんな知の歓びをかき立ててくれる場所があります。「かわさき宙(そら)と緑の科学館」。プラネタリウム、天体望遠鏡、地域の自然について学べる展示室などがあり、週末や祝日には教室、ワークショップや自然観察会が開催されています。
かわさき宙と緑の科学館は、川崎市唯一の自然科学系の登録博物館です。名前に『宙』と『緑』とあるように、自然・天文・科学をテーマにしています。最も人気があるのはプラネタリウムでしょうか。当館のために開発された次世代型プラネタリウム『MEGASTAR-III FUSION』で描き出す星空を『世界最高水準』とおっしゃる方もいます。屋上にはコンピュータ制御の天体望遠鏡があり、観測会も行っています」
そう説明してくれたのは、広報担当の渡辺友貴さん。MEGASTAR-III FUSIONを開発したのは世界中で評価されているプラネタリウムクリエイターの大平貴之氏で、川崎市生まれの氏は科学館に小学生のころから通い、当時の館長に質問を重ねていたそうです。科学館は昨年で開館50周年。1971年に誕生し2012年にリニューアルして現在の姿になりました。
「実は私も子どものころによく足を運んだ一人で、私の場合は、当時展示されていたアケボノゾウの骨格模型や生きものの剥製に目を奪われてしまいました。生きものに興味が行って、大学時代は蜂の研究をしていました」
科学館のプラネタリウムと対を成す目玉は、地域の自然を丁寧に紹介した展示室です。科学館を取り巻く生田緑地の中で暮らす生き物たちを標本や剥製で展示し、また、触ったり動かしたりして実感できる展示もあります(コロナ禍のため、一部休止中)。
プラネタリウムと自然展示で芽生えた興味を膨らませ、育てるのが、教室、ワークショップ、自然観察会などのイベントです。予約不要・無料で参加できるものから、事前予約制の本格的な実験教室まで、ほぼ毎週開催しています。
こうしたイベントをバラエティ豊かに開催できるのは、多くの市民団体が運営に参加しているからです。科学館のモットーは「市民とあゆむ宙と緑の科学館」。科学館は学びの場所であるとともに、人々が集い、つながる場所となっているのです。
写真:薮崎めぐみ
協力:かわさき宙と緑の科学館
※掲載の情報は、2022年10月時点の情報です