コロナ禍を経て、新たなステージへと進んだ私たちの暮らし。では、住むと働くが一体化した、新しい暮らしの舞台として相応しいのはどのような街でしょうか。それは、日常を活性化させる街。商店街での楽しい買い物、たくさんのイベント、感性を刺激するカルチャー、いやしを与えてくれる自然。すべてが揃う阿佐谷なら、退屈している時間などありません。
東京都杉並区の阿佐谷は、JR中央線「阿佐ケ谷」駅を中心に広がる街。改札口を出て街に繰り出すと、駅を挟んで南北に雄壮なケヤキ並木が続いているのに気付くでしょう。夏に涼しい緑のトンネル、秋に光り輝く黄金色のカーテンとなるケヤキ並木の足元には商店が並び、人々がショッピングを楽しんでいます。阿佐谷なら、いつもの買い物も退屈なルーティンではありません。ケヤキ並木の「中杉通り」は、阿佐谷での豊かな暮らしの象徴です。
阿佐谷には訪れて楽しい店がたくさんあります。器や布作家の個展から、落語や能の会も開催している「器とcafe ひねもすのたり」や本格的な台湾茶と台湾雑貨のショッピングが楽しめる「茶嘉葉」。ナポリから輸入した薪窯で焼き上げたピッツァが人気のイタリア料理店「Lupi 32」。自家製あんこで評判の「たいやき あんびえん」。お洒落な生活雑貨の店「758」も外せません。
昭和初期、阿佐谷は文化人が集まる街でした。太宰治や井伏鱒二らがこの街で交流を重ね、そして街に文化の種を蒔いたのです。個性的な店や施設が街の人々に支持されているのは、この歴史のせいかもしれません。映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」などの文化施設が複数あり、また「阿佐谷ジャズストリート」や「阿佐ヶ谷アートストリート」といったイベントは街の有志によって運営されています。阿佐谷ではアートは暮らしの一部です。
阿佐谷には商店街が複数ありますが、その代表は「阿佐谷パールセンター商店街」でしょう。全長約700mの長大なアーケード商店街で、「阿佐谷七夕まつり」や「ハロウィン仮装コンテスト」などのイベントもあり、いつも賑わっています。区役所や図書館も徒歩圏内にあり、「阿佐ヶ谷神明宮」では「阿佐ヶ谷バリ舞踊祭」や「グリーンマーケット」などが行われ、楽しいひとときを過ごすことができます。
JR阿佐ケ谷駅に加えて東京メトロ丸ノ内線「南阿佐ケ谷」駅も利用でき、JR中央線、総武線、東西線、丸ノ内線の計4路線を使いこなせます。公園も多く、少し歩けば桜の名所「善福寺川緑地」。暮らしに必要なものがすべて手に入るだけではなく、暮らしを彩り、豊かにするあれこれが揃っている阿佐谷は、これからの暮らしの舞台として理想的な街といえるでしょう。
阿佐谷では一年を通じて様々なイベントが開催されていますが、秋の代表といえば「阿佐谷ジャズストリート」。阿佐谷の街が丸ごとライブ会場になるといっても過言ではない、街をあげての大イベントです。区民センター、学校の体育館、神社の能楽堂、教会、ライブハウス、カフェ、駅前広場。商店の前などのちょっとしたスペースでも演奏され、通りをミュージシャンが練り歩く。10月の2日間、陽気なジャズのサウンドで、街全体が躍動します。
「今年は『いまこそジャズで明るく元気に』をテーマに10月21・22日に開催しました。コロナ禍を受けて3年ぶりの本格開催となりましたが、たくさんの方に楽しんでいただけて、ほっとしています」
そう安堵の表情を見せるのは、実行委員長の渡辺功一さん。阿佐谷ジャズストリートは1995年に始まり、今年で28回目。渡辺さんは20年前から運営に関わっています。
「1995年は世間の気分がちょっと沈んだ年だったんです。阪神淡路大震災に、地下鉄サリン事件。そんなときに、明るく元気になるイベントを、という声がどこかから湧いて来て、それが阿佐谷ジャズストリートの始まりだったと聞いています」
第1回の会場は3軒のライブハウスや駅前広場などを中心に13会場だけでしたが、今では街を丸ごと使った大イベントに成長。人が育って来たのも嬉しいと渡辺さんは話します。
「世界的な口笛奏者の武田裕煕さんという方がいるんですが、彼は杉並生まれで、小学生のときに阿佐谷ジャズストリートで見たジャズピアニストの山下洋輔さんの演奏に衝撃を受けて音楽の道に入ったそうです。そんな彼が今年の阿佐谷ジャズストリートに出演してくれて、私としても感無量です」
地域の小中学校のジャズバンドや吹奏楽部も阿佐谷ジャズストリートでの演奏を励みに練習を重ねて実力を上げ、今では都や全国の大会の常連になっています。今年の阿佐谷ジャズストリートでは、子ども向けの「Jazz for Kids」や、杉並第二小学校ウィンドバンドと阿佐谷が舞台のアニメ「ぼくらのよあけ」とのコラボレーションもありました。
阿佐谷ジャズストリートは、地域の人たちを中心に運営されています。主婦、会社員、学生、商店街で働く人…。企画から当日のハンドリングまで、阿佐谷の街を愛する約200名のボランティアスタッフで動かしています。阿佐谷に越して来て友だちを作りたいからとボランティアスタッフになった人もいるそうです。出演者は原則、阿佐谷にゆかりのある人。「演奏後に街を歩いて、いろんな人に会って、美味しいものを食べて、この街がもっと好きになったっていう人もいましたよ」と渡辺さん。
あるボランティアスタッフは阿佐谷ジャズストリートのことを「大人の文化祭」と表現しました。街を盛り上げ、人と人を結び付ける阿佐谷ジャズストリート。単なる音楽イベントを超えた存在です。
写真:薮崎めぐみ(1阿佐谷を歩く)
櫛引典久(2新しい風)
協力:阿佐谷ジャズストリート実行委員会
※掲載の情報は、2022年11月時点の情報です